【F1】枯れ葉、ゴミ、仮舗装。
世界遺産の難コースをベッテルのみ大歓迎

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki

 アゼルバイジャンの「バクー」と言われても、その場所や街のイメージを正確に答えられる人は、世界中でも多くはないだろう。そんな場所に、F1がやってきた。

世界遺産の旧市街地周辺に作られたバクー・シティ・サーキット世界遺産の旧市街地周辺に作られたバクー・シティ・サーキット 世界遺産に登録されている15世紀のシルバンシャー宮殿をはじめとした旧市街、18世紀の帝政ロシア時代に築かれたゴシック建築の美しい街並み。そして、日本でも有名になった建築家ザハ・ハディドなどが手がけるモダンでアーティスティックな近代建築が、街のあちこちに建てられている。その間を駆け抜ける市街地サーキットは、いろんな意味で世界でも類を見ないグランプリの舞台となった。

 ファレル・ウィリアムスやエンリケ・イグレシアスといった大物アーティストを招いて観戦客向けのコンサートを行なうなど、主催者側もショーアップに余念がなく、F1のボスであるバーニー・エクレストンもカナダGPの翌週だというのに木曜日から現地で精力的に動き回っていた。ドバイやアブダビと同じように、石油資源から観光資源へとシフトしたいアゼルバイジャンが、国家事業として力を入れていることは明らかだ。

 しかし、バクー・シティ・サーキットはあまりに特殊だった。荒れることで有名なF1直下のサポートレース『GP2』ではクラッシュが続発し、レースの大半がセーフティカー先導となった。

 サーキットとして使用する道路には一般道とはまったく異なるサーキット舗装を施し、世界遺産に指定されている旧市街周辺は、石畳の上に繊維シートと砂利層を挟んで仮舗装。それでもコンクリートウォールに囲まれたコースは、一部が道幅6メートル強という狭さで、ランオフエリアも十分に取ることができない状態だった。

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