念願のエアレース日本大会で室屋義秀が笑顔。
「人生で一番いい日」

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki photo by Matsuoka Kenzaburo

 この日の最初のセッションとなるラウンド・オブ・14(1対1のマッチプレイ方式で争われる)では、予選6位のマルティン・ソンカ(チェコ)と対戦し、50秒779というタイムを記録して勝利。これは今大会の全フライトのなかで最速という驚異的なタイムだった。続くラウンド・オブ・8では最終的に優勝を果たすボノムに敗れ、最終順位は開幕戦(6位)を下回る8位に終わったものの、地元のヒーローは強烈なインパクトを残して大会を終えたのである。

 室屋は記念すべき日本初開催のエアレースについてこう評した。

「今までやってきたことの成果として、ものすごい数の観客の前で飛べた。今日が人生で一番いい日なのかなと思う」

 だが、同時に室屋とってこの日は「人生で一番長い日」だったのではないだろうか。

 パイロットであると同時に、日本での「宣伝担当」も務めなければならず、レースに集中するのは難しかったに違いない。それでも室屋は強烈なプレッシャーに耐え、その両方を見事に務め上げた。

「長い間航空スポーツの世界を戦ってきたひとりとして、これだけ多くの人に見てもらえたことは大きなこと。レース前は感慨にふけりながら(飛行場から)レーストラックに向かった」

 室屋は最後まで明るく晴れやかな表情でそう語り、長かった1日の幕を下ろした。

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