【F1】ホンダ総責任者が振り返る序盤戦。「まだ山の裾にいる」

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

 ペルシャ湾に浮かぶ小さな島国バーレーン。その砂漠の真ん中に作られたバーレーン・インターナショナル・サーキットには、容赦ない陽射しが照りつける。肌寒さに凍えた上海での中国GPからわずか4日後にバーレーンに到着したマクラーレン・ホンダにとって、ここはシーズン序盤で最大の難関になりそうなGPだった。

 暑さもさることながら、このサーキットには長いストレートが多く、1周のうちスロットル全開時間は実に64%に及ぶ。つまり、エンジンとターボに高い負荷がかかることになる。そして、全開率が高ければそれだけ燃費は厳しく、100kgの規定燃料量で決勝レースを走り切るのは容易なことではない。

 さらには、長いストレートの終わりにそれぞれハードブレーキングが待ち受ける「ストップ&ゴー・サーキット」であり、そこで発電と放電を繰りかえすMGU-K(※)のモーターにも高負荷がかかる。
※MGU-K=Motor Generetor Unit - Kinetic/運動エネルギー回生装置

 逆に、高速コーナーと呼べるセクションは2カ所しかなく、ストレート最高速が遅い分をコーナーの速さでカバーするマクラーレン・ホンダにとって、極めて不利なサーキットといえる。

 わずか1週間のインターバルでパワーユニットに改良を加えることは難しく、中国GPで完走した2台のマシンは、そのままバーレーンへ運ばれてきた。それでも、ホンダのエンジニアたちは中国GPで得た膨大なデータを分析し、制御データの改良を重ねてきた。

 マクラーレン側も新型リアウイングや、バーレーンの暑さに対応するため冷却面に配慮したボディカウルを持ち込み、中国GPではジェンソン・バトン車にしか間に合わなかった新型フロアも、2台分用意された。

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