【MotoGP】気迫のロレンソ、
マルケスの年間優勝に「待った」

  • 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira
  • 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu

 こういう言い方は語弊があるのかもしれないが、ホルヘ・ロレンソ(ヤマハ・ファクトリー・レーシング)を、生まれて初めて心底かっこいいと思った。今までにも彼の走りに思わずうなりを上げたことはあったかもしれないが、ここまでほれぼれする姿を目の当たりにしたのは、今回が初めてだ。

気合の走りでもてぎGPを制したロレンソ。わずかながら年間優勝の可能性が出てきた。気合の走りでもてぎGPを制したロレンソ。わずかながら年間優勝の可能性が出てきた。 ツインリンクもてぎで行なわれた第17戦日本GPの決勝レースで、1周目から背後にピタリと張り付いて離れないレプソル・ホンダ・チームのマルク・マルケスとダニ・ペドロサを寄せ付けず、後半周回には意地と気迫と根性で様々な不利な要素をはねのけてマルケスたちをコンマ数秒ずつじわじわと引き離していく彼の姿は、まさに「世界一の男前」といってもいいくらい魅力的であった。

 ツインリンクもてぎは、急減速と激しい加速を繰り返す典型的なストップ&ゴータイプのコースレイアウトで、コーナーの旋回性能で勝負するヤマハよりも、ブレーキングの安定性やコーナー立ち上がりの加速力に優れるホンダのマシンに有利だと言われている。また、コース自体がホンダの関連施設であるために、走行データの蓄積等の面でもホンダにとって分があるといっていいだろう。じっさいに、過去2年の日本GPではペドロサがロレンソに圧倒的な大差をつけて勝っている。

 さらに、今年の決勝では、ロレンソは二種類のタイヤ選択のうち、リア用にソフト側のコンパウンドを装着してレースに臨んだ。レプソル・ホンダの2台はともにハード側を選択していた。一般的に、ソフト側は初期のウォームアップ性能に優れるが、ハード側は終盤までの耐久性にまさるという特性を持つ。全24周の中盤周回あたりまで、マルケスはロレンソの背後から様子をうかがっているようにも見えた。やや余裕がありそうなマルケスに対し、先頭を走るロレンソはむしろ、全身全霊を傾けて彼ら2台を従えて走るのが精一杯な様子でもあった。

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