面白いが悩ましい。F1中国GPで見えてきたピレリタイヤの特性 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

■各ドライバーがコース上でのバトルを回避した理由

 戦略の異なる上位勢とベッテルやバトン、ヒュルケンベルグの第2グループは、コース上で度々交錯することになった。だがコース上でバトルをしても意味がない彼らは、抵抗することもなくすんなりと上位勢を前に行かせる。バトルをすればむしろ、タイヤを痛めて自分の被害が大きくなってしまうからだ。

「戦う気がないなんて思われたくなかったけど、誰ともバトルをしないというのが最後まで最速で走りきるための方法だったんだ。前がクリーンな状態で走って、タイヤを壊さないことが重要だった。ロックでもしたら、その瞬間にこの戦略はお終いだからね」

 そう語ったバトンは、最初のミディアムタイヤで23周、さらに次のミディアムタイヤは26周も保たせて、2回ストップ作戦を成功させた。そして最後にソフトタイヤを履いてそのグリップを行かし、前のマッサを抜いて5番手まで浮上してみせた。

「トップと戦えるようなクルマじゃないのに、ここまでやれたのは戦略のおかげだよ。レースという意味ではエキサイティングな方法ではなかったけど、そのおかげで10ポイントが獲れた。フェラーリとロータスの1台を食えたんだから、満足だよ」

 レース後のバトンは清々しい笑顔でそう語った。

 そして、ベッテルも最後にソフトタイヤで猛プッシュを見せ、3位ルイス・ハミルトンにはわずかに及ばなかったものの、背後まで迫って4位でレースを終えた。序盤にヒュルケンベルグに抑え込まれていなければ、表彰台は確実に獲れていたはずだった。

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