【F1】残った遺恨。
チームメイト同士のバトルの難しさ示したマレーシアGP

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

終盤にチームメイト同士のバトルがあったレッドブル。マレーシアGPで優勝したのはベッテルだった終盤にチームメイト同士のバトルがあったレッドブル。マレーシアGPで優勝したのはベッテルだった マレーシアGPを2位で終えたマーク・ウェバー(レッドブル)は、怒りに肩をふるわせながら吐き捨てるように言った。

「マルチ21だ!」

 残り10周でウェバーから逆転優勝をもぎとったセバスチャン・ベッテル(レッドブル)は、ここでようやく事態の重大さに気付いたようだった。

 43周目にウェバーが最後のピットストップを終えた時、チームからはふたりに対して「マルチ21」の指示が無線で飛んだ。それはステアリング上のボタンで選ぶセッティングの名称で、エンジンの最大回転数を抑えてマシンを労(いたわ)るためのもの。つまりは、チームメイト同士での無用な争いは禁止し、トップはウェバー、ベッテルが2位のポジションをキープしろという指示なのだ。

 だがベッテルはそこで引き下がらず、ウェバーに挑み続けた。そして3周にわたるバトルの末、46周目には大きく回り込むターン1からターン2、そしてターン3からターン4へと、2台は息詰まるようなサイドバイサイドを繰り広げ、ヒヤリとするほどの接近戦でついにウェバーの前に出た。

 そのバトル自体は、近年のF1でもなかなか見られなかったほど素晴らしくエキサイティングで、なおかつプロフェッショナルでフェアなものだった。

 しかし、戦いはもう終わったものと思っていたウェバーにとっては面白くない。

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