【F1】小林可夢偉が振り返る序盤戦。「速いのにポイントが獲れていない」 (3ページ目)

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • 桜井淳雄●撮影 photo by Sakurai Atsuo(BOOZY.CO)

「とにかく遅かっただけです。戦略がうまくいくも何も、ロングランのペースが遅くてどうしようもなかったです。意外にタイヤが保たなくて、単純に速さがなかっただけですね。遅いものはどうしようもないから!」

 その原因のひとつが、エンジンだ。去年も泣かされることの少なくなかったフェラーリのカスタマー仕様エンジンは、メルセデスやルノーに比べると明らかにパワー面での不利が存在する。

「僕らのクルマは暑い方が苦手みたいですね。原因はエンジンかな。マッピング(エンジン特性を電子制御するための仕様書のようなもの)のせいだと思うんですけど、暑くなるとトルクが全然なくて。それは僕らにはどうしようもないんですけどね」

 バーレーンGPのサーキットはエンジンの不利が出やすい長いストレートが多い、ストップ&ゴーのコース。逆に、ザウバーC31の得意な中高速のコーナーは少ない。元々理想的ではないコース特性に暑さが加わったことで、苦戦は避けようがなかったのだ。

 元々、ザウバーとしてはシーズン序盤が勝負だというのは、パドックの共通認識として存在する。資金が潤沢な上位チームは常にマシン開発を続け、速さを増し続けていくが、ザウバーのような小さなチームにはそれが難しく、上位との差はどんどん拡大していってしまうからだ。

 上位勢の開発が加速するヨーロッパラウンドに入るまでが勝負。可夢偉としては、来季に向けた契約交渉が始まるこの時期までに、好成績を挙げておきたいという思いもあった。

 その勝負の開幕4戦を、不本意な形で終えざるを得なかった。

 しかし可夢偉はこれで終わりだなどとは考えていないようだ。今年は例年とは違い、ヨーロッパラウンドに入ってもまだまだ戦えるだけの力があるという手応えを得ているのだ。

「期待するしかないでしょ! 期待はいくらでもできるし、不安もいっぱい持てるけど……まぁ、バーレーンでは遅かったけどそれは特殊なサーキットやし、他のサーキットに行けばまた良くなると思うから、落ち着いていけばいいと思います。シーズンが終わったみたいに言わないでくださいよ、まだ20戦のうち20%しか終わってないんですから(笑)」

 ヨーロッパラウンドは5月第2週のスペインで開幕する。それに先だって行なわれるムジェロ合同テスト(5月1日~3日)で、各チームは大幅なアップデートにトライし、勢力図の変化も見えてくるだろう。ここでどれだけ上位勢についていけるか、ザウバーと可夢偉にとってはそれが最初の正念場になる。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る