Motor SportsF1

[2012年02月23日(木)]

【F1】開幕前テストで出揃ったニューマシン。
速いのはどのチームか?

  • 米家峰起●取材・文 text by Yoneya Mineoki
  • photo by Getty Images

バルセロナテストで速さを見せている昨年のチャンピオンチームのレッドブル 2回目の開幕前テストが行なわれるバルセロナでメルセデスAMGが新車を発表し、下位2チームを除くほぼ全てのニューマシンが出揃った。

 気になるのはもちろん、どのマシンが速いのかということだ。

 正直に言えば、テストで各マシンの速い・遅いを判断することは非常に難しい。各チームがセットアップやタイヤ評価、空力データ収集などさまざまな目的に沿って走行しているうえ、装着しているタイヤも4種類あり、燃料搭載量も最大で150kgほどの開きがあるからだ(10kg重ければタイムは1周あたり0.3秒ほど遅くなる)。

 それでも、マシンの素性の善し悪しやタイムの安定性、さらにはタイヤに対する優しさなどといった要素は見えてくる。前回のテストが行なわれたヘレスとは違い、バルセロナはマシン性能を試す幅広い要素が凝縮されたサーキットであり、また毎年スペインGPが行なわれる地でもあるため、各チームにとっては走り慣れた場所でもある。そこを舞台に走り込むことで、シーズンの開幕に向けて、ある程度の縮図は見えてくるのだ。

 まずハッキリと言えるのは、今年もレッドブルの速さは揺らいでいないということだ。初日にはセバスチャン・ベッテルがトップタイムを記録し、2日目からはレース週末を想定したシミュレーションを行なうなど、余裕が感じられる。全体的なレースペースのレベルも高い。

 昨年のオフスロットルブローを利用した「ブロウンディフューザー」(エンジンの排気をダウンフォース発生に活用する装置)で得ていたアドバンテージを失い、「まだその失われたグリップを少しずつ取り戻している途上だ」とベッテルは言うが、「クルマのフィーリングは良い」とも言い、レッドブルの優位はまだありそうだ。

多くの報道陣に囲まれる昨年王者のセバスチャン・ベッテル
 昨年レッドブルに唯一対抗したマクラーレンも、タイムこそ目立ってはいないが好調ぶりを見せている。テスト初日からドライバーの表情は明るく、特に高速コーナーでの挙動に満足しているという。

 シーズン中の開発能力はF1界随一とされる彼らだけに、スタート地点のレベルが高ければ打倒レッドブルも現実味を帯びてくる。ただし、マシンの熟成はまだこれからで、レースシミュレーションでもレッドブルにやや差をつけられている面もあった。

 苦境に立たされているのはフェラーリだ。前後ともプルロッド式という特殊なサスペンション構成にしたことで、その確認作業に追われている。昨年問題を抱えた風洞実験値の整合性もまだ完全に解決できていないのか、空力データ収集に追われてセットアップ作業が遅れている。

 マシン自体も、ドライバーはそうは言わないもののアンダーステア傾向で「扱いにくそうだ」との証言が多数聞こえてくる。「これまでとは異なる方法で開発にあたっている。僕らは僕らのやり方に専念するんだ」とフェルナンド・アロンソは慎重な見方をしているが、一発逆転を狙ったアグレッシブなマシン設計が裏目に出ないことを祈るばかりだ。

 キミ・ライコネンが復帰するルノー改めロータスは、ヘレスでは絶好調で今季一番の大穴と目されたが、バルセロナで走行したところ、マシンの強度不足が露呈。4日間のテストを丸々棒に振ってしまったうえ、マシン改修を余儀なくされてしまった。

 ヘレスに比べて高速域での走行が多く、ハードブレーキングや縁石の乗り越えなどマシンにかかる負荷が大きいバルセロナに来て、マシンの各部が破損するチームも少なくない。しかしロータスほどの大改修が必要となるケースは稀(まれ)だ。これによりある程度開発のスピードが削がれてしまう怖れもある。

 メルセデスAMGは、過去に他チームでテクニカルディレクター(技術責任者)を経験した3人ものエンジニアを獲得して強化した体制で、新車W03を完成させた。ライバルの2週間遅れで新車を出してきたということは、それだけ長く開発に時間をかけたことになり、開幕までに走り込める距離は少なくなるが、信頼性の高さでこれをカバーするつもりだという。それでも、今回のバルセロナが初テストであるため、まだシステム確認やセットアップの段階で、本領発揮とまではいっていない。

 ミハエル・シューマッハは「妥当なレベルでポジティブだ」と表現しながらも、ライバルとの比較を急いではいない。まだ目立ったタイムは出していないが、チームはいきなり優勝が可能だとは考えておらず、むしろ今季は将来のチャンピオン獲得に向けた再編成の1年と捉えているようだ。

 トラブルが続くザウバーも、バルセロナに来てようやく本来のプログラムが進んできた。セットアップ作業が始まり、徐々にペースは上がりつつある。小林可夢偉も「データを分析した限りでは、悪くないポジションにいるはず」と語り、課題は、各チームが開幕戦仕様のアップデートが投入される翌週3月1日から4日のバルセロナ合同テストでどこまでポテンシャルを引き出せるか、だ。

 今季も相変わらずレッドブル優位の様相が漂う2012年シーズン開幕前のF1だが、実際のところはフタを開けて見なければ分からない。チームにとってもファンにとっても、まだまだ予断を許さない開幕前テストが続くことになる。

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