[2011年07月13日(水)]
【MotoGP】全ライダーがボイコット!? 紛糾する日本GP開催問題
- 西村章●取材・文 text by Nishimura Akira このライターの記事一覧
- 竹内秀信●撮影 photo by Takeuchi Hidenobu
今シーズンの日本GP開催を巡る動きが紛糾している。
栃木県ツインリンクもてぎで行なわれる日本GPは、当初、4月24日に決勝レースを行なう第3戦として予定されていたが、東日本大震災の影響で10月2日決勝の第15戦へ延期されることになった。
地震の被害で損傷を受けたツインリンクもてぎのコースや施設はすでに補修が完了し、7月3日には全日本ロードレース選手権が開催された。
同じ日、欧州ではムジェロサーキットでイタリアGPが行なわれていたが、現地時間の午前に、FIM(国際モーターサイクリズム連盟)は、日本GP開催の可否決定を今月下旬まで延期する旨を発表した。
日本GPについては、レースを運営するDORNA(ドルナ)スポーツ社と国際選手権主催者のFIMは、以前から基本的に開催する方向であることを公言していたが、その最終決定はイタリアGPで行なう、とされていた。
が、福島第一原子力発電所の事故は欧州でも当然ながら深刻に受けとめられており、選手や関係者から身体への影響を憂慮する声は少なくなかった。
彼らの不安を払拭するために、ドルナとFIMは、災害の影響等を精査して安全に開催できることを確認し、そのうえで7月上旬に正式発表を行ないたい、としていた。
ところが、現状の情報では安全性の充分な確認ができないと訴える選手たちは、さらなる調査を要請する署名を集め、ドルナに対して提出するという動きに発展した。当初予定していた発表を先送りにしたのは、選手たちのこの動きに対応したものであることは言うまでもない。
ちなみに、この署名には青山博一を除く全選手が名を連ねており、Moto2クラスでも同様に署名活動の動きが見られるという。選手たちは、福島第一原発の事故に対する不安と懸念を4月や5月の段階からすでに公言していた。
たとえばホルヘ・ロレンソやマルコ・シモンチェッリのように、「自分はどんな情報も信じない」「僕はまだ若いし子どももいないのだから」と露骨に忌避感を表明する選手もいれば、「今の日本はロードレースの興業開催よりも優先するべきことがたくさんあるはず」と婉曲な表現に留めるケーシー・ストーナーのような選手まで、表現内容はさまざまだ。しかし、「日本に行きたくない」という意味では彼らの心情は一致していた。それが今回の署名運動という形に結実したというわけだ。
彼らが求めているのは、ツインリンクもてぎ周辺、あるいは関係者がレースウィークに宿泊する水戸や宇都宮が充分に安全であることを裏付けるデータであり、それを得るために「さらなる調査が必要」というのが彼らの主張だ。
しかし、それがどのような調査であったとしても、得られるものはあくまで空間放射線量などの実測値や疫学(統計・確率論)的な資料であろう。
これらの数値を読み解く専門家の見解も、国ごとに必ずしも一致するわけではない。安全と危険の両極端を主張する声を集めるのが容易であることは、日本国内の報道を見れば明らかだ。
いずれにせよ、選手たちには、自分たちの好まない見解や結論を見せられたときには、「調査が不十分だ」というフィードバックを返す選択肢がある。
彼らの求めているものが、危険性がゼロであることの証明なのだとすれば、それはいわゆる「悪魔の証明」(特定の事象が”ない”ことを立証するのは事実上不可能であるという命題)を迫るに等しい無理難題になるだろう。
だが、最終的な彼らの判断が、稚拙な陰謀論や単純な無知による疑心暗鬼ではない、選手個々人が合理的だと考えるリスク評価であるのならば、それがどのような結論であったとしても、その価値観と判断は当然ながら尊重されてしかるべきだろう。
であるとすれば、いま問われているのは、むしろ、彼らのリスクリテラシー(リスクに対する判断と対応)である、といってもいいのかもしれない。



















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