[2010年05月14日(金)]
電気自動車が切り拓くモータースポーツの未来〜パラダイムシフトと新時代の到来
- 川原田 剛●文 text by Kawarada Tsuyoshi このライターの記事一覧
- 池之平昌信●写真 photo by Ikenohira Masanobu
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日本でモータースポーツ人気が低迷している理由のひとつは、時代の空気とあまりにかけ離れているから、と感じている人は多いと思う。その直感はきっと間違いではない。
人々が環境問題に高い関心を持ち始め、化石燃料を浪費する時代から低炭素社会へのパラダイムシフトが地球規模で進行している。
そんな時代にもかかわらず、「ガソリンをガンガン燃やし、パーツを使い捨てにしながらスピードを競い合って、どんな意味があるのか?」という意見が出るのは当然のことだろう。
そんな声に対して、世界各地でさまざまな動きが出始めているが、今年から日本のモータースポーツ界でも新しい試みが始まった。
JMRC神奈川ジムカーナシリーズで日本自動車連盟(JAF)公認競技としては初めての電気自動車(EV)のチャンピオンシップが誕生したのだ。
ジムカーナは舗装路面にパイロンなどでコースを設定し、1台ずつ走行してベストタイムを競うというもの。ライセンスさえあれば誰もが気軽に参加でき、モータースポーツの原点とも言えるカテゴリーだ。
実は昨年もJMRC神奈川ジムカーナシリーズではスポット的にEVクラスのイベントが開催されていたが、今シーズン(全6戦)からは他のクラスと同様に年間のシリーズタイトルがかけられることになったのである。
4月に富士スピードウェイのジムカーナコースで行なわれた開幕戦にはダイハツ『ミゼットⅡ』を改良したEVが2台だけのエントリーだったが、5月の第2戦には、この4月から個人販売をスタートしたばかりの三菱『i-MiEV』が参戦を開始。さらに来月の第3戦以降は、新たなEVが登場してくる可能性もあるという。
「予想以上の盛り上がりですよ」と笑顔で語るのは、EVチャンピオンシップ創立の中心的な役割を果たしたZEVEXレーシングチームの鈴木一史代表である。
鈴木氏はもともと手作りのプラグインハイブリッドで日本列島縦断の旅をしたり、軽自動車の四駆を改良したEVで厳冬期の凍結した間宮海峡の横断に挑戦してきた冒険家。そんな彼が、なぜEVのチャンピオンシップを立ち上げようと思ったのか?
「今年は三菱が『i-MiEV』の個人販売を開始し、年末には日産のEV『リーフ』が登場します。これからは各メーカーがどんどんEVを販売していくでしょう。EV購入者の中には普段はクルマを移動に使っていても、週末にはモータースポーツをしたい人がいるはず。でも受け皿がないと何もできません。それで、手軽に始められるジムカーナのイベントをやろうと考えました。
私たちがレースで使用するミゼットⅡの改良には、バッテリー、モーター、コントローラー、充電器などなど、総額で70万円ほどかかりました。またEVのレースはバッテリーのマネージメントが難しいです。
本番のレースでは、コンマ数秒を詰めるためについついアクセルをガンッと思いっきり踏んでしまうこともありますよね。そうすると、鉛用のバッテリーは死んでしまうこともあるんです。
でも、これまでの経験からいって、いい仲間がいれば、どんなトラブルも解決できます。レースでは勝ち負けも重要ですが、このイベントを通してEVの新しいモータースポーツを理解してくれる仲間をひとりでも多く見つけたいです」と鈴木代表。
第2戦の会場には三菱の一員としてパリ・ダカールラリーで過去2連覇を達成した世界的なラリードライバー、増岡浩選手が姿を見せていた。
「開幕戦でi-MiEVのデモ走行をしたのですが、すごく乗りやすかった。やっぱりEVはトルクがあるので、ジムカーナのようなストップ&ゴーのコースではすごくダッシュが効きます。それにバッテリーを床下に搭載しているので、低重心化が図られています。コーナーでも安定しています。ジムカーナには向いていると思います」
と、EVの印象を語る増岡選手。EVのチャンピオンシップ誕生の意義についてたずねると、こんな答えが帰ってきた。
「EVやハイブリッドカー(HV)は、まだまだパリダカのような長く、過酷なイベントに出場できるほどの性能はありません。それでも、これまでガソリン車がラリーやレースを通して進化してきたように、今後はEVやHVでも同じことが行なわれていくと思います。
そういう意味で、これからもモータースポーツが存在意義を失うことはないと思います。ただし、これからの時代はマシンの進化だけでなく、常に環境を意識することを忘れてはいけません。その視点がなければ、イベントの主催者や参加するメーカーが、社会的な意義や責任を問われることになるのです。だからこそ私はEVのリーディングカンパニーである三菱とともに、このチャンピオンシップを盛り上げていきたいと思っています」
JMRC神奈川ジムカーナシリーズはローカルの小さなイベントだが、ここから日本のモータースポーツの新時代が始まるかもしれない。予感というより、確信に近い思いにとらわれている。




















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