今季限りのジーターが語った「ヤンキースで戦う重み」

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 今季限りでの引退を表明しているヤンキースのデレク・ジーターが、日本人メディアのために会見を開いたのは8月8日(現地時間)のことだった。もしヤンキースのプレイオフ進出がならなかった場合、ジーターのプレイを見られるのはすでに50試合を切ったことになり、周囲はこれまで以上に騒がしくなることが予想される。殺到する日本人メディアの取材依頼をけん制する意味合いもあったのだろう。時期尚早な会見ではあったが、ジーターは我々の質問に真摯に答えてくれた。

2003年からヤンキースのキャプテンを務めたジーター2003年からヤンキースのキャプテンを務めたジーター

 引退を決断した理由をジーターは「年齢的なものではない。野球は長い間、十分にやりきった」と達成感を口にし、「自分の人生において、新たなるステップを踏み出す時が来たと判断した」と語った。

 引退後も指導者や解説者に転じ、野球界に何らかの形で関わっていく選手は米国でも多い。もちろんジーターが望めば、ジョー・ジラルディ監督のあと、ヤンキース35代目の監督を務めることも可能だったはずだ。だが、「やってみたいと思うことがある」と目を輝かせるジーターの姿に"引退"という悲壮感はない。まさに"COOL"。ジーターほど格好いい選手はなかなかいるものではないと、あらためて感じさせられた。

 そんなジーターにかねてから聞いてみたいことがふたつあった。ひとつはニューヨークでプレイすることの厳しさについてだ。ヤンキースほど高待遇を受けられる球団はないが、それは結果を出した選手のみ。結果が出なければすぐに切り捨てられる。選手にとっては表裏一体の環境だと感じていたが、「ニューヨークでプレイすることで最も大変なことは何か?」と問うと、次のような答えが返ってきた。

「それはあなたたちの質問に答えることだよ。メディアの対応がいちばん大変だと思っている。野球は野球だよ。ニューヨーク、ボルチモア、デトロイト......たとえ日本であってもフィールドでプレイしている時に違いなどない。だが、ニューヨークではフィールドを離れても常に多くの関心を寄せられる。ニューヨークに来てプレイすることでいちばん大変なことは多くのメディアと関わっていくことだ」

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