現役最後の日、記者を感動させた松井秀喜のひと言

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 クリッパーズ対ボンバーズ。これだけで何の試合だかわかる方は相当な野球ファン。いや、ヤンキースファンと言った方が正しいだろう。

 実はこれ、毎年の恒例となっている"オールド・タイマーズ・デー"と称されるヤンキースのOB戦。今年も6月22日(現地時間)にヤンキースタジアムで行なわれた。そしてこの一戦に、松井秀喜が引退後、初めて参加した。

ヤンキースのOB戦に参加し、ファンたちの声援に応える松井秀喜。ヤンキースのOB戦に参加し、ファンたちの声援に応える松井秀喜。

 もちろん、背番号は「55」。試合前に行なわれたフリー打撃では、早くからかけつけたファンを前に21スイングで4本塁打。現役時代と変わらぬパワーを見せつけた。

 試合前のセレモニーでは2009年のワールドシリーズでMVPに輝いた映像が流れ、「お帰り、ゴジラ!」と紹介された。すると、どうだろう。スタジアムは大歓声に包まれ、スタンディングオベーションが起こった。並み居る歴代の錚々たるOB陣を差し置いての大歓声に、松井がこの街で築き上げてきた功績がいかに偉大であったかを再確認させられた。

 松井がヤンキース在籍の7年間で残した成績は、916試合に出場して打率.292、140本塁打、597打点。打線の中軸に座り、チームバッティングだけでなく、無類の勝負強さを発揮したが、決して突出した成績を残したわけではない。それでもヤンキースファンは、チームを去ってから5年が経つというのに、今も松井に敬意を表し大きな拍手を贈る。その理由はどこにあるのだろうか。

 松井がメジャーデビューした2003年。開幕してから2カ月間、松井は手元で動くツーシームに苦しみ、打率は2割5分前後。内野ゴロの山を築き、ニューヨーク・タイムス紙からは「ゴロキング」というありがたくないニックネームを頂戴した。

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