【MLB】若い投手に「トミー・ジョン手術」急増中の謎

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 メジャーリーグでトミー・ジョン手術がまるで感染病のように大流行している。開幕2カ月が経過したが、今季すでに20人もの投手が肘の靭帯再建手術を受けた。

 マーリンズのエース、ホセ・フェルナンデス(21歳)、アスレチックスのジャロッド・パーカー(25歳)、レイズのマット・ムーア(24歳)らチームの若き大黒柱として期待されていた投手が多く、各チームともに頭を痛めている。バド・セリグコミッショナーも5月初旬のオーナー会議でこの問題について触れ「新聞を読むのが怖い」と語ったほど。それほどにトミー・ジョン手術を受ける投手のニュースが相次いだ。

高校時代から150キロ近い速球で注目を集めていたレイズのマット・ムーア。高校時代から150キロ近い速球で注目を集めていたレイズのマット・ムーア。

 周知の通り、メジャーリーグではマイナーの育成時代から厳格な投球管理を行なっている。年間70、90、120と少しずつ投球イニングを増やし、強化を図っている。もちろんその間は、投球過多を防ぎ、肩、肘の故障につながらないよう最大限の配慮を行なっている。にもかかわらず、トミー・ジョン手術は後を絶たない。なかでも問題視されているのが、トミー・ジョン手術を受ける選手の若年化だ。その原因はいったいどこにあるのか。

 そんな折、米国の野球専門誌『BASEBALL AMERICA』にこんなデータが出ていた。2007年から2014年の間に、プロデビュー(マイナーを含む)を果たした投手は8766人で、そのうち米国の大学出身者は2662人、同じく高校出身者は2148人で、全体の54.9%にのぼる。また、同時期にトミー・ジョン手術を受けた投手は362人で、米国の大学出身者は142人、米国の高校出身者は86人。比率は63%に跳ね上がる。

 冒頭で触れた3投手をはじめ、2010年のスティーブン・ストラスバーグ(ナショナルズ)、昨年のマット・ハービー(メッツ)も米国の高校、大学出身者。トミー・ジョン手術を受けるのはアメリカ育ちの投手に圧倒的に多いのがわかる。
※ホセ・フェルナンデスはキューバ出身だが、15歳の時にアメリカに亡命し、米国の高校に入学した。

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