松坂大輔、好投しても先発に戻れない本当の理由 (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 松坂はこの春のキャンプで、右腕のヘンリー・メヒアとともに先発5番手の座を争っていた。その争いの中で十分な結果を出したにもかかわらず、開幕はマイナーで迎えることになった。そして今、メッツの先発に2つの空きが出た。開幕投手であるディロン・ジーの故障者リスト入りと、メヒアのクローザー転向である。

 しかし、メッツ首脳陣はそのスポットに、マイナーからラファエル・モンテロとジェイコブ・デグロムの若手ふたりを昇格させた。彼らはキャンプ時に、今季の先発構想には入っていなかったふたりだ。だからこそビートライターは「話が違うじゃないか」と首をひねっているのだ。

 なぜ松坂は先発として投げられないのか?――周囲の話を総合すると、松坂の契約条項に含まれている先発投手としてのオプションの支払いを抑えたいために、サンディ・アルダーソンGMはブルペンでの起用をテリー・コリンズ監督に進言しているというのだ。松坂にとっては何とも気の毒な話であり、納得しがたい話であろう。それでも松坂は黙々と慣れないリリーバーの仕事と向き合っている。

「なかなかそこ(先発)に戻るのは簡単なことではないと思いますけど、どの場面で投げるにせよ、結果を出し続けていくしかありません。もちろん先発はやりたいですけど、今はリリーフとして、チームの勝ちにつなげられる試合が多くなればいいんじゃないですか」

 人懐っこい笑顔で、胸の奥底にある理不尽な思いへの虚無感をかけらも見せない松坂。彼らしい力のあるボールが蘇(よみがえ)ったことは何よりも嬉しいことだが、我慢の時はもう少しだけ続くようだ。

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