苦況のイチロー。それでも「準備をしない僕は...僕ではない」

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Getty Images

 3018試合出場――田中将大が本拠地デビューを果たした4月9日(現地時間)のオリオールズ戦で、イチローは野村克也氏が持つ日本プロ野球最多出場記録の3017試合を上回り、また新たな金字塔を打ち立てた。だがイチローは、新記録樹立もじつに素っ気なかった。

「出ているだけでカウントされるものに、僕は価値観を見出せないので......。それに尽きるよね」

ここまで4割を超す打率を残しているイチローだが、スタメン出場は3試合しかない。ここまで4割を超す打率を残しているイチローだが、スタメン出場は3試合しかない。

 実働26年で野村氏が記録したのに対し、イチローは23年目のシーズン序盤で達成した。日米での試合数の違いや、捕手と外野手というポジションの特性の違いを考えれば、簡単に比較することはできないが、イチローは23年目での3018試合出場を「僕にとっては少ないぐらい」と話した。

 2012年7月23日、イチローは野球人生を懸けた決断を下し、マリナーズからヤンキースに移った。当時、ヤンキースから「控え外野手としての起用もある」と条件を突きつけられたが、イチローはそれを受け入れた。そしてヤンキース移籍後の67試合で打率.322の結果を残し、レギュラーの座を勝ち取った。

 結果が出なければすぐさまベンチ要員という境遇は昨年も変わらなかった。そんな中、2013年のイチローは打率.262と自己最低の成績に終わったが、出場試合数は150を数えた。

 だが今季は、チームが10試合を消化した4月10日の時点で、イチローの出場試合数は6。その中でスタメン出場は3試合しかない。イチローが結果を残していないのなら十分に理解できるが、ここまでのイチローは14打数6安打、打率.429と好成績を残している。今季から導入された「チャレンジ制度」(※)で、イチローは内野安打と盗塁で2度チャレンジの対象となったが、いずれもイチローのスピードが上回った結果となり2連勝。40歳になった今でも衰えることのないスピードをアピールする格好となった。

※昨季までは本塁打に限定されていたビデオ判定の対象が、今季からはストライク、ボールの判定を除いたほぼすべてのプレイで可能となった。各チームの監督はビデオでの審議を求めることができる「チャレンジ」の権利を1試合で1度ずつ持ち、判定が覆(くつがえ)った場合は2度目の要求が可能になる。

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