日本も見習うべき「カージナルス流」勝てる組織の作り方

  • 佐藤直子●文 text by Sato Naoko
  • 田口有史●写真 photo by Taguchi Yukihito

 今年のMLBワールドシリーズは、ボストン・レッドソックの6年ぶりの優勝で幕を閉じた。オバマ大統領も絶賛したと言われる守護神・上原浩治の快投や、ワールドシリーズで打率.688という驚異のバッティングを見せたデビッド・オルティスの活躍が光り、地区最下位だった昨季からわずか1年で世界一を手に入れた。

ポストシーズンで4勝を挙げた22歳のマイケル・ワカ。ポストシーズンで4勝を挙げた22歳のマイケル・ワカ。

 一方、頂上決戦にたどり着きながら、シーズン最後を敗戦という形で締めくったセントルイス・カージナルスは、大一番で「らしさ」を発揮できず。走攻守にわたり堅実なプレイを信条とするチームには珍しく、小さなミスが大きな綻(ほころ)びにつながり、12回目のワールドチャンピオンを逃した。

 正直に言えば、ワールドシリーズ開幕前の下馬評は 「カージナルス有利」の声が多かった。選手を見ても、プレイを見ても、レッドソックスのような派手さはないが、チームとしてまとまった時、個の力が2倍にも3倍にも膨れ上がる、組織としての不思議な魅力があったからだ。

「言ってみれば、全員野球なんですよね。カージナルスの戦い方っていうのは。この伝統は僕がいた時もそうだったし、それ以前もそうだった。そして、今も引き継がれている」

 そう語るのは、かつてカージナルスでプレイした田口壮氏だ。そして今季ポストシーズンで頻繁に耳にした「カージナル・ウェイ(カージナルス流)」というフレーズについて、田口氏なりの解釈を尋ねると、次のような答えが返って来た。

「全員でユニホームを汚しながら泥臭くプレイする。その意識の統一が、メジャーだけではなく傘下マイナーまで、しっかり行き渡っているんです。

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