数字が語る「上原浩治はポストシーズンに強い」

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu photo by AFLO

 9月20日、最大の激戦区と言われるア・リーグ東地区のボストン・レッドソックスが、2位以下を大きく引き離して6年ぶりの地区優勝を決めました。その快進撃を支えていたのは、間違いなくクローザーの上原浩治投手です。現在、4勝1敗19セーブ・防御率1.18。特にクローザーに抜擢されてからは、驚異的な数字を記録しています。そこで今回は、上原投手が残している様々な数字から、彼のすごさを紹介したいと思います。

クローザー抜擢後、抜群の成績を残しているレッドソックスの上原浩治クローザー抜擢後、抜群の成績を残しているレッドソックスの上原浩治 今シーズン、200人以上の打者と対戦したピッチャーを対象にしてみると、選手の総合評価を示すWHIP(※)の上原投手の値は0.57でメジャー1位、防御率1.18はピッツバーグ・パイレーツのマーク・メランソン(1.07)に次ぐ2位、そして被打率.129もメジャー1位の記録をマークしています。また、ストライク率74.0%はセントルイス・カージナルスのエドワード・ムヒカ(74.4%)に次ぐ2位、奪三振率39.1%はシンシナティ・レッズのアロルディス・チャップマン(42.8%)とカンザスシティ・ロイヤルズのグレッグ・ホランド(41.0%)に次ぐ3位、そして与えたフォアボールの1試合平均1.18個はメジャー4位。つまり、今シーズンの上原投手は、いずれの分野でもメジャートップクラスの数字を叩き出しているのです。

(※)WHIPとは、被安打数と与四球数(与死球数は含まない)を投球回数で割った数値で、1イニングあたり何人の走者を出したかを表わす。WHIP1.00未満なら球界を代表する投手と言われている。

 さらに細かいデータを見てみると、チェイスレート(バッターがボール球に手を出した確率)は前述のムヒカ(41.6%)に次ぐ2位の39.3%、コールドストライクレート(見逃しでストライクを奪った確率)はレッズのブロンソン・アローヨ(41.7%)とフィラデルフィア・フィリーズのクリフ・リー(41.4%)に次ぐ3位の40.4%を記録しています。そして何より注目すべき数字は、ポップアップレイト(内野フライに打ち取った確率)がメジャー1位の23.0%を記録している点でしょう。なぜならば一流バッターほど、滅多に内野フライを打ち上げないからです。1980年代から1990年代にかけて5度の首位打者に輝き、巧みなバットコントロールで名を馳せたウェイド・ボッグス(元ボストン・レッドソックスなど)は、1年間に内野フライを3本しか記録しなかったシーズンがありました。つまり、上原投手は並み居るメジャーリーガー相手に、バットの芯をことごとく外して討ち取っているのです。バッターにボール球を振らせ、ときには抜群の制球力でストライクを奪い、そして内野フライで打ち取るピッチング----。いまや上原投手は、メジャーで1、2を争う大投手だと言えるでしょう。

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