パイレーツ大躍進の秘密は「イタリア代表クローザー」にあり (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by AFLO

 そのパイレーツとともに前半戦のナ・リーグを大いに盛り上げたのが、同じ中地区のカージナルス(53勝34敗)です。81試合を消化した段階で勝率6割を突破していたのは、メジャー30球団の中でカージナルスとパイレーツの2チームのみでした。特にカージナルスは昨年、アルバート・プホルスがロサンゼルス・エンゼルスに、そして今年は先発の柱だったカイル・ローシュがミルウォーキー・ブルワーズにと、次から次へと主力選手がチームを離脱。そんな戦力にもかかわらず、カージナルスは素晴らしい成績を残しています。現在、チームに残って戦っている25人のメンバーのうち、生え抜き選手は19人。これはメジャーで最も多い人数です。また、19人のうち17人がドラフトでカージナルスが直接指名した選手なのです。主力が抜けても、次々と若手が台頭してきます。まさしくカージナルスの強さは、チームのスカウティングと選手育成の賜物と言っていいでしょう。

 特に注目すべきは、カージナルスの強力打線です。打率(.274)、出塁率(.335)、得点(431)、すべてリーグトップ。どの数字もダントツの成績を残しています。現在、ナ・リーグの打率10傑には、1位ヤディアー・モリーナ(.346)、3位アレン・クレイグ(.325)、6位マット・カーペンター(.316)と、3人もカージナルスの選手が入っています。また、ベテランのカルロス・ベルトランも打率.307・19本塁打・51打点と絶好調。カージナルスの強力打線を支えているひとりと言えるでしょう。

 青木宣親選手がブルワーズに所属しているものの、ナ・リーグ中地区は日本でもあまり注目されていません。豊富な資金のあるチームが東地区と西地区に集まるため、中地区は「スモールマーケット」と呼ばれ、レベルが低いと評されているからです。しかし、カージナルスとパイレーツは、他の地区のチームを圧倒する強さを見せています。特にパイレーツの年俸総額は、ア・リーグのオークランド・アスレチクッスより低いメジャー27位の6628万ドル(約67億円)です。ほとんどお金をかけていないのに、この勝率は特筆すべきことだと思います。

 一方、中地区と対照的な前半戦だったのが、西地区のサンフランシスコ・ジャイアンツとロサンゼルス・ドジャースでしょう。昨年のワールドチャンピオンのジャイアンツは現在4位タイ(40勝47敗)、そして大型補強で覇権奪還に挑んでいるドジャースは借金2を抱えての2位(43勝45敗)という有り様です。唯一、勝ち越しているのが、首位のアリゾナ・ダイヤモンドバックス(47勝42敗)のみ。ナ・リーグ西地区は、ほとんどのチームが勝率5割以下なのです。

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