今だから言える「イチロー2年契約の真実」 (3ページ目)
グレツキーは8シーズン連続50ゴールを獲得するなど、合計で9シーズン50ゴールを達成した。1980-81年シーズンにはリーグ記録となる92ゴールを獲得。歴代最多となるゴール数、アシスト数、ポイント数を記録し、1999年にキャリアを締めくくった。
「こんなことを言うのもおかしな話なんですけど……」と言い、ギリックは語り始めた。
「もちろん、失礼な意味で取らないでほしいんですけど、イチローは打っていないと思うんです。彼はボールを導いているのだと思います。イチローは、グレツキーがアイスホッケーのパックを導くかのようにボールを打ちます。グレツキーは動きの速い選手であったわけでも、身体能力がいちばん優れていたわけでも決してなかったと思います。ただ、リンクの上でどこにパックがあるのかということがわかっており、打つのではなくパックをゴールに導いていたのです。彼は今まで見たこともないような、華麗で優雅な選手でした。感心してしまうのは、彼が強く打ち過ぎたところを一度も見たことがありません。彼のパックへの感触は完璧で美しかった。それがイチローとまったくダブるのです。私が思うに、イチローはどこにでもボールを導くことができます。もしそれが意識しているものでなければ、それは常に繰り返し行なわれていた練習の賜物(たまもの)だと思います」
そうしてギリックは、イチローのメジャー3000本安打の可能性についても語り始めた。
6月2日現在、デレク・ジーターやアレックス・ロドリゲスが戦列を離れているため、イチローは今シーズン試合に出場している選手の中で最多の通算2652安打を放っていることになる。それでも、早くてもヤンキースとの契約終了後の2015年シーズンにならなければ達成は難しいだろう。でもギリックは、これまで28人しか達成していない3000本安打をイチローは達成すると思っている。
「達成するでしょう、絶対に。彼が、3000本を打たないわけがない。イチローの3000本安打達成に関して疑問な点は、なぜヤンキースはその2年の契約終了後のオプションを付けなかったのかということです。例えばの話をしましょう。もし2年後、彼が2900本以上打っていたとします。3000本安打をニューヨークで迎えられたら、彼にとってどんなに素晴らしいことか。この契約が2年プラス、オプション付きのものでなかったことに驚きました」
イチローが複数年契約をしたこと自体珍しいが、この世代で最も優秀なGMのひとりである彼にとっては、もっと稀な出来事だった。つまり、実に50年近くフロント経験のあるギリックが、契約終了時に40歳を超える野手に複数年契約を持ちかけたことは、イチロー以外では記憶にないと言う。
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