【MLB】次々と主力選手を放出。レッドソックス、チーム解体の真相 (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by REUTERS/AFLO

 ゴンザレスに関しても、10年オフに若手有望株を出してまで獲得にこだわった選手。しかし、その彼も監督批判を公然と行ない、7月末にはオーナー陣にバレンタイン監督の解任を数人の選手たちとともに直訴。しかし、これが逆に経営陣の逆鱗(げきりん)に触れることになった。

 レッドソックスの球団首脳は、厳格な企業経営者だ。オーナーのジョン・ヘンリーと球団社長のラリー・ルキーノは企業倫理に厳しい。そのふたりに対し、ゴンザレスらの選手がとった行動は、企業の規律を重んじる経営者にとっては許しがたい行為だった。彼らの価値観からしてみれば、今回の放出は当たり前のことだった。

 そしてもうひとつ、背景にあったのが人件費の削減だ。本拠地のフェンウェイ・パークは今年100周年を迎えたが、チームはこのメモリアルイヤーに世界一になるため、これまで選手を揃えてきた。今季の年俸総額は、ヤンキース、フィリーズに次ぐおよそ1億7500万ドル(約137億円)。それだけに、目標としていた世界一が絶望的となった時点でチームの解体を検討するのは、不思議なことではない。

さらに2014年からは新たな労使協定が締結されており、年俸総額が1億8900万ドル(約145億円)を超えるとぜいたく税の課金が50%になる。これはヤンキースをはじめとしたお金持ち球団の最重要課題である。レッドソックスも、ゴンザレスは18年まで1億2700万ドル、クロフォードは17年まで1億250万ドル、ベケットは14年まで3150万ドルの契約を残していた。その時期に起こったチームの造反劇。経営陣にとっては、まさに渡りに船だった。

 バレンタイン監督に反旗を翻(ひるがえ)したつもりが、一転してトレードに出されてしまったレッドソックスの主力選手たち。米メディアが報じた「バレンタインの勝利」「選手より監督が大事」という表現はどうかと思うが、レッドソックス・ファンにとってはたまらない。どちらが正しいとかは関係なく、ただ反逆の時期が悪かったとしか言いようがない。

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