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【MLB】リーグトップタイの5勝目を挙げたダルビッシュ。最多勝の可能性は? (2ページ目)

  • 福島良一●解説 analysis by Fukushima Yoshikazu
  • photo by Getty Images

 一方、『キング』の愛称で親しまれているシアトル・マリナーズのフェリックス・ヘルナンデスも、チームの得点力がアップすれば、必ず最多勝争いに食い込んでくるはずです。2010年は打線の援護に恵まれず、サイ・ヤング賞に輝く活躍を見せながらも、13勝しか挙げられませんでした。今シーズンも、8イニング以上投げて1失点以内に押さえながらも勝てなかった試合が3つもあるんです。通算でもそのような試合が10回もあり、アメリカでは「最も不運な投手」と言われています。今シーズンも防御率2.29で、奪三振もメジャートップの58個と申し分ないのですが、まだ3勝止まり。ただ、マリナーズの得点力も昨年までに比べれば少しは上がっているので、これから勝ち星を伸ばしてくる可能性は十分あります。

 また、ダルビッシュ投手を抑えて4月の月間最優秀投手に輝いたシカゴ・ホワイトソックスのジェイク・ピービーも要チェックです。2007年のサンディエゴ・パドレス時代にナ・リーグ最多の19勝を挙げてサイ・ヤング賞を受賞したピービーですが、2009年のシーズン途中にホワイトソックス移籍後、2年続けて防御率4点台と奮わず、限界説も囁(ささや)かれていました。ところが今シーズン、4月に3勝1敗・防御率1.67を記録して完全復活。現在4勝を挙げており、今後も目が離せない存在でしょう。

 そして、まだエースとは言えないのですが、面白い新人投手も出てきました。オークランド・アスレチックスのトミー・ミローンというピッチャーです。昨年オフにワシントン・ナショナルズからトレードで移籍した25歳の左投手で、3月に日本で行なわれた巨人とのオープン戦に先発して5回2安打無失点と好投し、初の開幕ローテーション入りを果たしました。そしてシーズンが始まると、決め球のチェンジアップが冴え渡り、なんとすでに5勝をマークしているのです。しかも本拠地オークランドでは、開幕から3試合の先発をすべて白星につなげ、防御率0.39という驚異的な記録を残しています。ア・リーグの最多勝争いは容易ではないですが、ミローンも注目すべきピッチャーだと思います。

 このようにア・リーグの先発ピッチャーには、ものすごいメンバーがそろっています。しかし、ダルビッシュ投手も負けてはいません。5勝目を挙げたエンゼルス戦の投球には、本当に驚かされました。雨天で2時間も試合が中断したのに続投するなんて、かつてメジャーで見た記憶はないぐらいです。1時間も中断すれば、ピッチャーを交代させるのがメジャーの常識なんです。そんなチームのために頑張るダルビッシュ投手の姿を見て、かつての野茂英雄投手を思い出しました。

 日本人メジャーリーガーの最多勝利数は、松坂大輔投手が2008年に記録した18勝。アジア人だと、2006年・2007年に王建民(当時ヤンキース)がマークした19勝です。レンジャーズは打線も絶好調なので、ダルビッシュ投手が20勝を挙げるのも、そして最多勝のタイトルを獲るのも、決して夢ではありません。はたして1年目で快挙を達成できるのでしょうか。これからもダルビッシュ投手を応援したいと思います。

著者プロフィール

  • 福島良一

    福島良一 (ふくしま・よしかず)

    1956年生まれ。千葉県出身。高校2年で渡米して以来、毎年現地でメジャーリーグを観戦し、中央大学卒業後、フリーのスポーツライターに。これまで日刊スポーツ、共同通信社などへの執筆や、NHKのメジャーリーグ中継の解説などで活躍。主な著書に『大リーグ物語』(講談社)、『大リーグ雑学ノート』(ダイヤモンド社)など。■ツイッター(twitter.com/YoshFukushima

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