【MLB】米国永住権のない松井秀喜にとって険しいメジャーへの道のり (2ページ目)

  • 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
  • photo by Thomas Anderson/AFLO

 3月に入るとオープン戦が始まる。ここでは主力の調整に加え、試してみたい若手選手に出場機会を与える場となる。そこで、もし実績十分のベテラン選手を参加させれば、彼らにもプレイする機会を与えなければならない。つまり、それは若手選手のプレイ機会を奪ってしまうことに直結する。だから、GMも監督もこれを望まないのだ。もちろん、彼らに招待選手のオファーがないとは言わないが、可能性は低いだろう。

 では、マイナー契約はどうか。これは可能性のある話ではある。3月から始まるマイナーキャンプに合流し、ケガ人などで生まれるメジャーの欠員を待ち、メジャー昇格を目指す。ただ、「実績のある彼らのプライドが許すのであれば」の話なのだが......。

 ここからは松井秀喜のみの場合で考えてみたい。松井はアメリカの永住権を取得してないので、アメリカでプレイする場合にはいかなるレベルにおいても就労ビザが必要となる。以前はメジャー契約の場合はP-1、マイナー契約の場合はH-1と呼ばれるビザであったが、数年前からメジャーリーガーもマイナーリーガーもビザはP-1となった。これは松井にとっては追い風で、H-1は発給数に制限があって、この時期のビザ取得は不可能に近かった。つまり、この時期に外国人がマイナー契約をもらえるチャンスはなかった。しかし、P-1は発給数に制限がないので、契約が決まればビザはもらえる。しかし、ビザが発給されるまでには契約締結から最低でも2週間かかり、これがメジャーを目指す松井にとっては大きな問題となる。

 仮に今、松井が招待選手としてキャンプに参加したとしよう。それでもビザが手元に届くまでには2週間かかり、それまではオープン戦に出場できない。3月に入ればオープン戦がはじまり、契約が遅くなればなるほど日程は消化されていく。調整時間が減り、実戦を重ねることでバッティングの調子を整えていく松井にとって、開幕メジャーを勝ち取る状況は厳しくなる。

 招待選手かマイナー契約か、あるいはケガ人が出た場合の代替選手契約か。メジャー10年目のシーズンにこだわる松井にとって、今は無情にも時間だけが過ぎている。

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