[2011年12月28日(水)]
【MLB】松井秀喜「イチローさんが変わったのではなく、投手レベルが格段に上がった」
- 笹田幸嗣●文 text by Sasada Koji
- 益田佑一●写真 photo by Masuda Yuichi
ライバルたちが語る2011年のイチロー②~松井秀喜(アスレチックス)編
2011年、イチローが200安打を達成できなかった理由は何なのか? このことについて取材を進めていると、各方面から次のような話をよく聞いた。
「試合時間短縮のためにストライクゾーンを広くしている」
選手たちは本当にそのことを感じているのだろうか。松井秀喜に今シーズンのストライクゾーンについて聞いてみた。
「ストライクゾーンが広がったという話は聞いたことはありますけどね……。でも、僕に言わせれば、こっちに来た時からずっと広いって感じですよ(笑)。僕自身は意識したことはあまりないね」
今シーズンの松井は、打率.251、本塁打12、打点72と、自己ワーストの成績に終わった。この結果について、松井は37歳の年齢が及ぼした部分を否定しようとはしなかった。一方で、松井より1つ年上のイチローの今シーズンについてどう思ったかを聞くと、マイケル・ヤングと同じようなことを話し始めた。
「アスレチックスとの試合ではすごく打っていますからね。イチローさんの打撃に変化を感じたことはないけど、リーグ全体でみると打撃成績は落ちている。昨年あたりから投手レベルが格段に上がったと感じます。どんな投手でも最低4つぐらいは球種を持っていますから。本当に球種は増えましたよ。その上、フロントドア(内角のボールゾーンからストライクゾーンに入ってくる球)とかバックドア(外角のボールゾーンからストライクゾーンに入ってくる球)の反則技も使うからね……(笑)」
松井の言葉通り、メジャー全体を通して2009年には40人いた3割打者が、昨年は24人に減り、今年は26人。安打製造機と評されるヤングでさえ「厄介だ」と語った投手陣のレベルアップ。松井は投手がレベルアップした理由を、次のように分析する。
「お手本となる投手が右にも左にもいるのが大きいんじゃないかな。例えば、右ならばロイ・ハラデー(フィリーズ)、左ならクリフ・リー(フィリーズ)とかね。彼らの体のメカニックを学び、球種を覚え、投球術を習得する。お手本となる投手を真似することから始まって、みんながすごく勉強しているというのは、チーム内を見ても、対戦していても感じますよね」
10年以上も前に野茂英雄から次のような話を聞いたことがある。
「僕がメジャーに来た頃は、1チームにすごい打者はせいぜい2人か3人だったですけど、今はどの打者もホームランを打てる。ポイントが体に近くなって、パワーがついている。打者のレベルは確実に上がっています」
しかしこの時、野茂はこう続けた。
「打者のレベルが上がるということは、投手のレベルアップにつながるんです。誰もがボールを微妙に動かすのもそうですし、年々、球種も増やしていきますから」
ヤングや松井が言うように、投手のレベルは確実に上がっており、近年は投手全盛時代と言ってもいいだろう。しかし、その投手たちに対応していくのが打者の宿命でもある。つまり、投手のレベルアップは打者のレベルアップを招くのだ。それが、野球が永遠に進化を続けていく理由であると、松井は語る。
「投手のレベルが上がれば、打者はそれに対応しなくちゃいけないわけですから、打者のレベルアップにつながると言えるでしょうね。イチローさんが衰えたとはまったく思わないし、今年の結果に対し、しっかり修正してくるのがイチローさんでしょう。来年は間違いなく200安打すると思いますけどね」
松井が送ったイチローへのエール。自身の来季への展望であるとも受け取ったが、ここにひとつのヒントが隠されている。それは、取材をした選手すべてが、「来季のイチローは200安打をする」と語ったその根拠だ。「イチローならば、必ず修正してくる」――松井が言いたかったのも、まさにここにあると感じた。
(つづく)




















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