ア・リーグチャンピオンのレンジャーズか、それともナ・リーグチャンピオンのカージナルスか。世界最高峰の戦い、107回目のワールドシリーズが始まった。しかし、今年も開幕ロースターに日本人選手の名はなかった。2002年、ジャイアンツの新庄剛志に始まり09年のヤンキース・松井秀喜まで8年連続で日本人選手の勇姿を観てきた我々にとって、2年連続で最後の決戦に日本人選手がいない事実は寂しい限りだ。もちろん、一番悔しい思いをしているのは当事者の上原浩治であり建山義紀である。リーグチャンピオンシップではともにロースター入りをしていた彼らだけに、その屈辱は計り知れない。
特に上原浩治は球団史上初のワールドシリーズ制覇の使者として、オリオールズからトレード・デッドラインで迎え入れられた。シーズンは防御率2.35、WHIP(※1)は0.72。見事な成績で期待に応えたが、ポストシーズンに入ってからは防御率33.75、WHIPも5.25。信じられないほどの落ち込みである。国際試合の経験も豊富であり、大舞台になればなるほどその存在感を発揮してきた上原がなぜ……。これも短期決戦の恐ろしさというものなのか。
上原はポストシーズンで3本の本塁打を浴びた。レンジャーズのロン・ワシントン監督は「球が高い」と、その原因を分析したが、果たしてそれだけであろうか。
確かにリーグチャンピオンシップでタイガースのカブレラに許した本塁打はフォークボールが高めに浮いたものだった。デイビジョンシリーズで打たれたレイズのロンゴリア、チャンピオンシップで許したタイガースのラバーンの本塁打は、いずれも外角高めの直球だったが、捕手ナポリの構えたミットは寸分も動かない、狙い通りのコースだった。本来ならば、空振りかファール、ポップフライになるはずのボールだった。それを2球とも本塁打された上原のショックは計り知れない。
9月に入りクラブハウスで支度をする上原の姿を見て気になることがあった。上半身、下半身ともに体の厚みがなくなり、以前より体が小さくなったと感じた。その時はこれも長いシーズンを戦ってきた証し、ごく一般的な変化と思ったが、10月に入り、軽くスタンドまで運ばれた2つの直球は球威不足と考えるしかない。原因は体力的なものなのか、技術的なものなのか、それとも両面から来るものなのか。
「ケガなく1年間を乗りきる」
過去2年間、シーズンをまっとうできなかった上原が、今季を迎える前に立てた目標だ。彼はそのために「練習をやり過ぎない、体を追い込みすぎない」ことをテーマとし、シーズン中は体調の維持に努めてきた。地区優勝を決めた9月23日も「個人的なことを言うと1年間をやり通したい。あと5試合なので僕はそこに目標を置いている」と、メジャー3年目にしてはじめて離脱することなく、シーズンを終えることに拘(こだわり)りを見せていた。この言葉を聞いて、上原は10月を前に精魂ともに尽き果ててしまったのではないかと感じてしまった。
日本人選手がメジャーの第一線で戦い抜くことは並大抵なことではない。それはこの場で戦ったすべての日本人選手が痛切に感じていることだ。体力、すなわち排気量の違いは技術で埋めることもできるが、それもすべてが万全であってはじめて可能になる。これが、日本人選手がメジャーで戦う厳しさだ。上原もこの悔しさを糧とし、来季へのモチベーションとし、さらなる飛躍につなげてほしい。
※1=WHIPとは被安打数と与四球数(与死球数は含まない)を投球回数で割った数値で、1イニングあたり何人の走者を出したかを表わす。一般に先発投手であれば1.00未満なら球界を代表するエースとされ、1.20未満ならエース級と言われている。




















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