【競馬】日本の牧場の行方を左右する「牝馬問題」

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第47回

パカパカファーム代表のハリー・スウィーニィ氏は、自身が感銘を受けた日本競馬界のさらなる発展を心から願っている。そこで今回は、日本の牧場が抱える問題点を指摘し、牧場を取り巻く環境がよりよくなっていくための提案をしてもらった――。

牧場では、牝馬、牡馬ともに、変わりなく大事にされているが......。牧場では、牝馬、牡馬ともに、変わりなく大事にされているが......。 2001年の開場から、わずか11年でダービー馬を輩出するなど、これまで"順風満帆"な道を歩んできたように見えるパカパカファームだが、決してそんなことはない。苦難も多く、なかには「かなり厳しい時期もあった」という。あるスタッフが語る。

「パカパカファームにとって、一番きつかった時期は、2006年~2008年の頃。なぜかというと、そのとき生まれた仔馬の半分以上が牝馬だったからです。牝馬は、牡馬に比べて取引価格が安くなってしまいますから、あのときは本当に大変でしたね」

 サラブレッドの生産牧場にとって、生まれてくる仔馬の性別は重要な問題となる。ウオッカやジェンティルドンナなど、近年では牡馬と互角以上に渡り合う牝馬が立て続けに登場しているものの、総合力で勝るのは、やはり牡馬。日本ダービーなどビッグレースでの勝利を望む、一般的な馬主が求めるのは、どうしてもオスの仔馬が多くなるからだ。

 とすれば、買い手が多い牡馬のほうが、牝馬よりも高額で取引されるようになる。逆に牝馬は、必然的に価格が安くなったり、あるいは、売れにくくなったりする。こういった仔馬の性別による価格の差は、当然、牧場の収入に大きく関わってくることになる。

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