【競馬】JC、ジェンティルvsハープ「勝つのはどっち?」 (3ページ目)
とはいえ、競馬に絶対はない。「ハープスターに利あり」と声高に語る識者もいる。独自の競馬予想『TF(タイムフィルター)指数』を駆使する競馬評論家の市丸博司氏は、「むしろ今回こそ、ハープスターに勝つチャンスがある」と断言する。
「ジェンティルドンナは確かにジャパンカップ連覇中ですが、3歳時は最内をぴったり回って、斤量の恩恵もあって(3歳牝馬=53kg、3歳牡馬=55kg、古馬牝馬=55kg、古馬牡馬=57kg)、ぎりぎり勝つことができました。昨年は低調なメンバー構成で、15着に沈んだゴールドシップ(牡5歳。当時4歳)の自滅にも助けられました。しかし今回は、昨年とはメンバーのレベルが違います。一昨年のような、斤量の恩恵もありません。『TF指数』でも6番手くらいの評価に過ぎません。
翻(ひるがえ)って、ハープスターは札幌記念で、同コースが得意であるはずのゴールドシップ(2着)を完封しました。さらに、凱旋門賞では仮柵を外した“グリーンベルト(芝が生えそろったきれいな馬場)”の外、荒れた馬場でほとんど伸びないコースを通ったにもかかわらず、強烈な末脚を披露。潜在能力の高さは見せたと言えます。『TF指数』でも斤量53kgが評価されて、出走馬の中で1位となる数値が出ました。今回に限れば、ハープスターはジェンティルドンナに勝てます」
獣医の資格を持ち、独特の馬体診断でも定評のある中日スポーツの若原隆宏記者は、2頭の体型を比べて「ハープスター有利」と分析する。
「この2頭の馬体を比較すると、推進力を生み出す、運動力学的な構造がまるで違うことがわかります。ハープスターはすらりとした後躯(※)の腱が良質なバネとして働いていて、一度作られたスピードを、新たなエネルギーを加えずにうまく保存できるタイプです。対してジェンティルドンナは、筋肉質で、失われた運動エネルギーをせっせと補填(ほてん)してスピードを得るタイプ。今春のドバイシーマクラシック(1着。3月29日/ドバイ・芝2410m)で見せたような、前が詰まり通しの中、一瞬馬群が開いたところを、一気に加速して抜けられるのは、運動エネルギーを瞬時に補填できるからこそ成せる業です。
平たく言えば、トップスピードに乗る過程、あるいはスピードに乗ってから、スムーズな走りを見せるのが、ハープスター。ごちゃつく中で、馬群をさばく立ち回りに長(た)けているのが、ジェンティルドンナ。今回のメンバーを見ると、中団で大混雑しそうな展開が予想されます。そこで、ジェンティルドンナはその混雑からうまく抜け出せるでしょうが、最後の上がり勝負となった場合、中団馬群の外をスムーズにトップスピードで駆け抜けていくハープスターのほうが有利になると思うのですが……」
※馬体は大きく分けて、前躯(ぜんく)、中躯(ちゅうく)、後躯(こうく)の3つに分けられる。お尻や後肢などは後躯に入る。
はたして、ジェンティルドンナが驚異のジャパンカップ3連覇を遂げるのか、驚異的な末脚を秘める若き牝馬が世代交代を果たすのか。そうそうたる顔ぶれの中で繰り広げられる“牝馬の頂上決戦”から目が離せない。
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