【競馬】エリザベス女王杯、歴史からひも解く「穴馬5頭」

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • photo by Nikkan sports

 11月16日(日)に行なわれる、GIエリザベス女王杯(京都・芝2200m)。3歳牝馬と古馬牝馬が激突する「秋の女王決定戦」は、戦前から混戦の様相を呈している。

 混戦が予想される最大の理由は、実績馬たちの多くが不安を抱えていることだ。例えば、出走馬の中で断然の実績を誇るメイショウマンボ(牝4歳/父スズカマンボ)。同馬は昨年、牝馬限定のGIレースで3勝(オークス、秋華賞、エリザベス女王杯)を挙げたが、今年は4戦していまだ勝ち星なし。昨年ほどの"勢い"がないのは明らかだ。

 GI2勝(2013年、2014年ヴィクトリアマイル)のヴィルシーナ(牝5歳/父ディープインパクト)にも、不安がある。彼女は、今年5月のヴィクトリアマイル(5月18日/東京・芝1600m)で優勝。その後は、牡馬相手のGI宝塚記念(6月29日/阪神・芝2200m)でも3着と好走した。しかし今回は、それ以来の「休み明け」。実戦を使って調子を上げるタイプだけに、4カ月半ぶりのレースで全力を出せるのか、疑問が残る。

 3歳勢では、直近のGI秋華賞(10月19日/京都・芝2000m)を勝ったショウナンパンドラ(牝3歳/父ディープインパクト)に期待が集まるが、秋華賞の勝利は、小回りコースの最内をうまく抜け出したもの。浜中俊騎手の好騎乗によるところが大きく、古馬相手に勝ち切れるだけの実力があるかどうかは、未知数だ。

 それぞれ不安を抱える有力馬たち。そうした状況を踏まえると、たとえ実績で劣る馬たちにも、台頭するチャンスは十分にありそうだ。エリザベス女王杯の歴史を振り返ってみても、意外な穴馬が戴冠した年がある。とすれば、過去の傾向から、大仕事をやってのける伏兵を探すのも悪くない。

 エリザベス女王杯の歴史を振り返って、まず目につくのが「3歳馬の強さ」。ここ10年で5勝と、半数を占めているのだ。さらに3着以内で見れば、近8年では必ず3歳馬が絡んでいる。「年齢のハンデ」が取り沙汰される3歳馬だが、この舞台ではむしろ、その若さを"強み"にしていると捉えるべきではないだろうか。

 それを象徴するように、過去10年の勝ち馬5頭のうち、「伏兵」という扱いながら勝利を飾った3歳馬が2頭いる(外国馬は除く)。2008年のリトルアマポーラ(牝/父アグネスタキオン)と、2006年のフサイチパンドラ(牝/父サンデーサイレンス)である。

 2頭とも、春は「クラシック(桜花賞、オークス)制覇」の期待を持たれたほどの素質馬だった。しかし、ともに結果は残せず(※)、巻き返しが期待された秋華賞でも、リトルアマポーラは6着、フサイチパンドラは3着と敗れた。おかげで、両馬のエリザベス女王杯における評価は、「3歳同士で勝てなかった馬が、一段とレベルアップする古馬との対戦で勝つは難しい」というものだった。

※リトルアマポーラ=桜花賞2番人気5着、オークス1番人気7着。
フサイチパンドラ=桜花賞2番人気14着、オークス5番人気2着。

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