【競馬】生産者も驚愕した、ディープブリランテのデビュー戦

  • 河合力●文 text&photo by Kawai Chikara

『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第30回

2010年春、ディープブリランテは生まれ故郷のパカパカファームを離れて、同馬を購入した大牧場ノーザンファームへと移った。生活環境が変わっても、順調に成長していったディープブリランテ。翌2011年10月1日、ついにデビュー戦を迎えた。パカパカファームの人々はそのとき、どんな思いでレースを見つめていたのだろうか――。

ディープブリランテもかつては、仲間たちと一緒に広大な牧場の中を駆け回っていた。ディープブリランテもかつては、仲間たちと一緒に広大な牧場の中を駆け回っていた。 日本の競走馬は、2歳の春過ぎ(JRAの場合はおよそ6月頭)からレース出走が可能となる。そのため仔馬たちは、1歳の後半頃から、競走馬になるための準備を徐々に進めていく。主に、人が安全に騎乗できるように馬を慣れさせていく「馴致(じゅんち)」、トレーニングを積んで馬自身の基礎体力をつける「育成」などが行なわれる。

 パカパカファームから巣立ったディープブリランテも、1歳になって新天地ノーザンファームの施設で馴致・育成を翌年まで行なった。この段階になると、生産者であるパカパカファームがディープブリランテと直接かかわる機会はない。デビューを見守る立場となる。

 とはいえ、手を離れたあとも生産馬の様子は気になるもの。パカパカファーム代表のハリー・スウィーニィ氏も、ノーザンファームの育成施設『ノーザンファームしがらき』(滋賀県甲賀市)を訪れたとき、ちょうどそこでトレーニングを積んでいたディープブリランテの様子を、現場スタッフから事細かく聞いたという。

「あれはディープブリランテが2歳のとき、デビューまであと少しの段階だったと思います。別の用事でノーザンファームしがらきに行ったのですが、ディープブリランテの成長が気になって、スタッフの方々に同馬の現状について、しつこく聞いてしまいました。すると、調教のビデオやこれまでのタイムデータなどを細かく見せてくれたんですよ。それで、問題なく育っているな、という印象を強く持ちました」

 牧場を移ってからすでに1年。順調にデビューへと近づくディープブリランテを見て、スウィーニィ氏は安堵したという。「スタッフの人がもっと(ディープブリランテのことを)絶賛してくれたら、さらにうれしかったのですが、それでも順調そうで何よりでした」と笑みを浮かべる。

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