【ボクシング】TKO勝ちも、村田諒太に課せられた多くのノルマ

  • 原 功●文 text by Hara Isao 矢野森智明●写真 photo by Yanomori Tomoaki

 2012年ロンドン五輪ミドル級金メダリストで、今年8月にプロデビューした村田諒太(三迫ジム)が、12月6日のプロ2戦目でも8ラウンドTKO勝ちを収めた。14戦13勝(8KO)1敗の中堅どころ、対戦相手のデイブ・ピーターソン(アメリカ)に少々手を焼いたが、最後は自慢の強打を叩きつけて仕留めてみせた。改めて潜在能力の高さを感じさせると同時に、課題も浮き彫りになった試合だった。

ほぼ無傷だったデビュー戦とは違い、多くのパンチを受けて両目を腫らした村田諒太ほぼ無傷だったデビュー戦とは違い、多くのパンチを受けて両目を腫らした村田諒太 この日の試合を村田は、「2戦目ということで少し緊張感に欠けていたかもしれない。最初は固くなってしまった」と振り返った。たしかに序盤は危なげはなかったものの、攻めあぐねている印象が強かった。軽打でつないでくるピーターソンを持て余し、後手に回るシーンもあった。4ラウンドには右を浴びて、防御に追われる場面も見られた。「あれがゴロフキン(9連続KO防衛中のWBA世界ミドル級王者)だったら、KOされていた」と、苦笑いを浮かべたほどだ。

 また、村田の得意とする右ストレートは当たってはいたものの、その多くは身体の柔らかいピーターソンに巧みに流されてしまった。つまり、相手にはパンチが見えていた。予知ができたため、最低限の対応は可能だったということになる。スピードや打ち出しのタイミングという点で、課題を残しているといえそうだ。

 ただ、勝負を決定づけたのは、一見すると地味な左ジャブだった。5ラウンド開始前、「重心を落としてジャブを突け」というコーナーの指示を受けた村田は、ひざを沈めるようにしてこのパンチを繰り出すことでリズムを刻み、相手の反撃を断ち切ることができた。即座に切り替えができる対応力と技術力は、高く評価していいだろう。

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