【競馬】天皇賞・秋、本命ジェンティルドンナの意外な「敵」 (2ページ目)

 唯一気になるのは、馬場状態がどこまで悪くなるのか、という点です。台風の影響がどれほどあるかわかりませんが、相当な雨量があってレース当日の馬場がかなり悪化するようだと心配です。ジェンティルドンナ自身は、道悪をそれほど苦にしないと思いますが、道悪をより得意とする馬に出し抜けを食らうシーンがあっても不思議ではありません。

 その候補となるのが、力のいる洋芝(北海道の競馬場の芝)の重賞レース、函館記念(7月14日/函館・芝2000m)、札幌記念(8月18日/函館・芝2000m)と連勝を飾ったトウケイヘイロー(牡4歳)です。

 特に、前走・札幌記念は大雨による影響で酷い馬場でした。にもかかわらず、トウケイヘイローはスイスイとまるで泳いでいるかのような走りで、あっさりと逃げ切ってしまったのです(2着馬に6馬身差)。

 スピードだけでは押し切れない府中の芝2000m。まして逃げ馬にとっては、かなり厳しいコースですが、もし札幌記念のような馬場になったら、トウケイヘイローにとっては好材料です。そういう意味では、今年の天皇賞・秋は、馬場状態がレースの行方を左右するカギになりそうですね。

低迷を脱して、復調気配がうかがえるトゥザグローリー。低迷を脱して、復調気配がうかがえるトゥザグローリー。 さて、今回の「ヒモ穴馬」には、前走の京都大賞典(6着。10月6日/京都・芝2400m)で復調の気配を感じさせたトゥザグローリー(牡6歳)を指名します。重賞は通算5勝。GIの舞台でも、2010年、2011年の有馬記念で3着と好走し、本来実力のある馬です。

 それが、昨年の宝塚記念(12着。2012年6月24日)以降は、ふた桁着順が続く体たらく。年齢的な衰えがあって、もう浮上するのは厳しいかもしれないな、と思っていましたが、敗因を探ってみると、いくつかの理由が浮かび上がりました。

 ひとつは、近年の酷暑。もともと同馬は暑さに弱いようで、夏場に調子を落としてしまうのです。ゆえに、すでに暑さ厳しい初夏に行なわれる宝塚記念は毎年大敗。一昨年(2011年6月26日)も13着に沈みました。でも今年は、宝塚記念を使わずに夏場は休養。それも、ずっと北海道で放牧されていたようなので、この秋は例年とは違って、いい状態で迎えられるのではないでしょうか。

 そしてもうひとつ、休養する前まではツメの具合が今ひとつだったようです。あの繊細な脚で500kgを超える体を支える競争馬にとって、ツメの状態の善し悪しは成績にも大きく影響します。惨敗が続いた要因のひとつであることは間違いありません。

 しかしそのツメも、昨年の有馬記念(16着。2012年12月23日)から休ませたことで、回復しているのではないでしょうか。だからこそ、京都大賞典で「オッ!」と思わせる競馬を見せられたと思います。ツメの不安を解消し、涼しくなってきた今、例年とは違うトゥザグローリーの強さを、ぜひ見せてほしいですね。

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著者プロフィール

  • 大西直宏

    大西直宏 (おおにし・なおひろ)

    1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。

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