【ボクシング】4戦目で日本チャンプ。井上尚弥は辰吉を超えられるか!?

  • 原 功●文 text by Hara Isao photo by AFLO

 井上尚弥(20歳/大橋ジム)が予想どおり4戦目で、日本ライトフライ級王座を獲得した。8月25日、地元のスカイアリーナ座間で行なわれた田口良一(26歳/ワタナベジム)との10回戦で3対0の判定勝ちを収め、平仲信明や辰吉丈一郎に並ぶ日本最速記録をマーク。今後は井岡一翔(24歳/井岡ジム)が2年半前に樹立した、「7戦目の世界戴冠」という日本記録の更新を目指すことになる。

日本最速タイ記録となる4戦目で日本王座をつかんだ井上尚弥。世界挑戦は何戦目か?日本最速タイ記録となる4戦目で日本王座をつかんだ井上尚弥。世界挑戦は何戦目か? 田口との試合は、49キロに満たない軽量級らしいスピーディーでスリリングな攻防だった。井上がプロ転向する前のスパーリングではダウンを食らうなど、散々な内容で「TKO負け」を喫していた田口だが、さすがに自身が持つ日本王座の防衛戦となると、意気込みも研究も十分だった。

 それでも井上は、さらにその上を行った。中盤まではスピードと多彩なコンビネーションを上下に打ち分けて加点。終盤には相手の土俵に入り込んで、打ち合いに応じた。最終回など、リードを確信した大橋秀行会長が、「倒しに行くな」とセーブしたにもかかわらず、果敢に打撃戦を挑んだ。20歳の若武者らしい、闘争心、KOへの強いこだわりを見てとることができた。

 総じて合格点といえる内容だったと言えるだろう。まずは、忙しく動きながら10ラウンドをフルに戦いきるという実戦的スタミナが備わっていることは証明された。井上は4月の試合でも10回TKO勝ちを収めているが、そのときは終始自分のペースでワンサイドに戦った結果だった。しかし今回は、途中で相手にポイントを取られる場面も経験したうえでの10ラウンドだった。そこに大きな意味がある。世界戦並みの注目を浴びるなか、最後まで集中力を切らさなかったハートの強さは、人並み以上のものがある。

 必ずしも好ましいことではないが、田口戦では相手のパンチを浴びる場面もあった。それにより図らずも、平均以上の耐久力が備わっていることを証明した。これも、収穫のひとつに挙げておきたい。

 これで井上の戦績は、昨年10月のプロ転向から4戦全勝(3KO)となった。連続KOは途切れたものの、日本王者だった田口が持っているWBA3位の肩書もそのままいただくことになりそうだ。井岡の記録を更新する5戦目、あるいは6戦目の世界戴冠は現実的なものになりつつある。

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