【競馬】
日本競馬に適した繁殖牝馬を見出した外国人牧場長の「慧眼」

  • 河合力●文 text by Kawai Chikara
  • 写真提供:パカパカファーム

『パカパカファーム』成功の舞台裏
連載●第21回


アイルランド人のハリー・スウィーニィ氏が開場したパカパカファームは、開場以来、質の高い繁殖牝馬をそろえ、土地の拡張なども行なって、着実に発展してきた。そして2009年、スウィーニィ氏がこだわり続けてきた血統から、パカパカファームの"最高傑作"が誕生した。それが、2012年のダービーを制したディープブリランテだ。

これからのパカパカファームを担っていく繁殖牝馬たち。これからのパカパカファームを担っていく繁殖牝馬たち。
 8月3日(土)、新潟競馬場で行なわれた2歳新馬戦(芝1800m)は、多くの競馬ファンから熱い視線が注がれていた。というのも、今年デビューを迎える2歳世代の中で、早くから評価が高かったディープインパクト産駒の素質馬、ガリバルディ(牡2歳)とオリハルコン(牡2歳)の2頭が、この一戦でデビューするからだ。

 注目の舞台で1番人気に推されたのは、ガリバルディ。同馬は、騎乗する福永祐一騎手が秘めた能力を絶賛した逸材だった。血統を見ても、兄に重賞2勝のマルカシェンク(父サンデーサイレンス)、姉に重賞1勝のザレマ(父ダンスインザダーク)がいる良血。大牧場・社台ファーム生産馬の中でも、この世代の「エース」と噂されていた。

 2番人気はもちろん、もう一頭の注目馬オリハルコンだ。社台ファームと双璧をなすノーザンファームの生産馬で、オルフェーヴルなどを管理する池江泰寿厩舎に入厩。こちらもデビュー前から評判を集め、クラシック戦線での活躍が見込まれていた。

 同じ社台グループの中枢として、日本競馬をけん引する2大牧場の社台ファームとノーザンファーム。それぞれの期待馬が、デビュー戦でいきなり激突するのである。多くのファンが注視するのは当然のことだった。

 ところが、このレースを制したのは、人気を分けた2頭ではなかった。ガリバルディ(2着)とオリハルコン(4着)を退け、デビュー勝ちを決めたのは、3番人気のクラリティシチー(牡2歳)。キングカメハメハを父に持つ同馬こそ、パカパカファームの生産馬だったのだ。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る