【競馬】宝塚記念で波乱を引き起こす、意外な穴馬 (2ページ目)
3頭の中で、最も減点材料が少なく、加点が多いと思うのは、フェノーメノです。前走の天皇賞・春では、初めての長距離輸送を難なく克服。唯一の心配も杞憂に終わる、強い競馬で勝利しました。
もともと、いつGIを勝ってもおかしくないほどの素質馬でした。ところが、クラシックの前哨戦となる弥生賞(2012年3月4日/中山・芝2000m)で6着という不本意な結果を残したことが、ミソの付き始めでした。クラシック第1弾の皐月賞には出走できず、日本ダービー(2012年5月27日/東京・芝2400m)では勝利を目前にしながら、粘るディープブリランテにハナ差及ばず2着。古馬と初対戦となった天皇賞・秋(2012年10月28日/東京・芝2000m)でもいちばん強い競馬を見せながら、内をすくったエイシンフラッシュに出し抜けを食らうような形で2着に敗れました。昨年は、本当に運のない競馬が続いていたと思います。
それが、今年に入って風向きが変わりました。日経賞(3月23日/中山・芝2500m)では、「苦手」と言われていた右回りで圧勝。そのまま、天皇賞・春で悲願のGIタイトルを手にしました。フェノーメノには今、"流れ"が来ていると思います。
阪神競馬場は初舞台となりますが、内回りの2200mという宝塚記念と同じようなコース形態の、中山のセントライト記念(2012年9月17日/中山・芝2200m)で快勝しています。前述した日経賞を圧勝していることからも、前走の天皇賞・春より今回の条件のほうがフェノーメノには合っていると思います。好位で折り合って、終(しま)いも確実に脚を使ってきます。3頭の中では、この馬が優位と見ています。
「3強対決」も楽しみですが、オルフェーヴルの回避によって、3頭以外の馬が3着以内に飛び込んでくる可能性が広がりました。その候補として、今回の「ヒモ穴馬」に取り上げたいのは、ローゼンケーニッヒ(牡4歳)です。
まだ、1000万下の特別レースを勝ったばかりの条件馬の身。ゆえに、ほとんど注目されていませんが、血筋に魅力があります。輸入繁殖牝馬ローザネイから始まる『薔薇一族』と呼ばれる牝系で、半兄には2010年にジャパンCを制したローズキングダムがいます。血統背景は、まさにGI級なのです。
馬っぷりは、兄にも勝るとも劣らない好馬体の持ち主。かかる気性が災いして出世が遅れましたが、ここ3戦はクリスチャン・デムーロ騎手が手綱をとって、競馬を教え込んできました。道中うまくなだめて、前走の三木特別(6月1日/阪神・芝1800m)では、強烈な決め手を引き出していました。その決め手は、文字通りGI級のモノでした。いよいよ「素質開花した」と言っていいのではないでしょうか。
距離が2200mに延びる今回は、折り合い面が課題になりそうですが、こういうタイプの馬は、クラスが上がって厳しいペースになったほうがより高いパフォーマンスを発揮します。そもそも、昨秋の神戸新聞杯(5着。2012年9月23日/阪神・芝2400m)では、見方によっては勝ったゴールドシップに次ぐ、強い競馬をしていました。人気馬3頭と同じ明け4歳馬のローゼンケーニッヒ。決して侮れない存在だと思います。
著者プロフィール
大西直宏 (おおにし・なおひろ)
1961年9月14日生まれ。東京都出身。1980年に騎手デビュー。1997年にはサニーブライアンで皐月賞と日本ダービーの二冠を達成した。2006年、騎手生活に幕を閉じ、現在は馬券を買う立場から「元騎手」として競馬を見て創造するターフ・メディア・クリエイターとして活躍中。育成牧場『N.Oレーシングステーブル』の代表も務め、クラシック好走馬を送り出した。
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