【ボクシング】村田諒太はプロでも世界の壁を越えられるか? (2ページ目)
また、アマチュアの試合で義務付けられているヘッドギアは、もちろんプロでは認められていない。さらに体重区分も若干異なり、村田の属するミドル級は、プロのほうが約3キロ軽い。プロでもミドル級で戦うとするならば、アマチュア時代よりもさらに厳しい減量を強いられることになる。
そして採点に関しても、アマチュアが「クリーンヒットを数えるポイント制」に対し、プロは「ダメージに重点を置く」という違いがある。グローブもアマチュアのほうが大きいものを使用しているため、耐久力という点でも、必然的にプロのほうがより高いものを要求されることになる。
そのため、アマチュアのエリートたちがプロの水に馴染み、世界の舞台で活躍するには4年~6年ほど必要とされている。アジアや中南米に選手が集中する軽量級とは異なり、欧米を中心に世界的に選手層の厚い中重量級は、特に育成に時間がかかるだろう。村田がプロに転向した場合、どんな相手が待ち受けているのか、同じ現役ミドル級の『先輩』たちを例に挙げて見てみよう。
2004年アテネ五輪銀メダリストのゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン&ドイツ)は、プロ転向から4年目の2010年にWBA世界ミドル級タイトルを獲得。現在、25戦全勝22KOといまだ無敗の存在だ。また、世界ランキングでWBC4位につけている2008年北京五輪ミドル級覇者のジェームズ・デゲイル(イギリス)は、2009年のプロ転向後は15戦14勝9KO1敗の戦績を残しており、大舞台の機会を待っている状態。さらに、アマ時代に世界選手権連覇を経て2008年北京五輪に出場したマット・コロボフ(ロシア)に至っては、プロ4年で18戦全勝10KOを収めていながらも、いまだに8回戦でテストマッチを繰り返している。プロの水に慣れるべく、大手プロモーションが慎重にマッチメイクしているからだ。
村田がプロ転向を果たし、順調に成長を遂げた暁(あかつき)には、彼らが大きな壁として立ち塞(ふさ)がることになるだろう。村田の求める栄光は、何枚か重なった壁の向こう側にある。
4年に1度のオリンピックを制覇することは奇跡に近いが、プロの頂点を極めることも同等に至難の業といえる。だからこそ村田は挑戦する気になった――と考えることは、金メダリストを美化しすぎだろうか。
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