【競馬】岩田康誠「秋華賞に挑むジェンティルドンナは、ブエナ級の器」 (3ページ目)

  • 新山藍朗●取材・構成 text by Niiyama Airo
  • photo by Nikkan sports

――だから、秋華賞を勝つためには「ローズSが大事」だったわけですね。

「トライアルでしたけど、絶対に取りこぼせない一戦ということで、メチャメチャ緊張しました。でもその分、秋華賞は楽に乗れそうな気がします」

――ローズSは二冠目を飾ったオークス以来のレースでした。ひと夏越して、ジェンティルドンナは期待どおりに成長していましたか?

「春は小学生か中学生くらいで、それが大学生になったという感じでした。目がすごく落ち着きましたね。それにハートもどっしりしたし、自信に満ちあふれていて『私はすごいのよ』という雰囲気を醸し出している。春よりグンと成長したし、パワーアップもしました」

――ところで、岩田騎手がジェンティルドンナに初めて騎乗したのは、デビューから4戦目の桜花賞トライアル、チューリップ賞でした。結果は4着でしたが、そのときの印象はいかがでしたか?

「その前のシンザン記念でルメール騎手が乗って、牡馬相手に完勝した馬ですからね。チューリップ賞で(騎乗の)依頼を受けたときは、正直『いい馬が回ってきた』と思いました。でも、厩舎の人が『今回は熱発明けだから……』と言っていて、実際に見た目も冴えなかった。『これはあかんかも』と思っていたら、結果は4着。しかも、あのレースで断然人気だった(福永)祐一くんの馬(ジョワドヴィーヴル=3着)とは、ほとんど差がなかった(半馬身差)。それで、この状態でこれだけ走れるのなら、次の桜花賞は勝てるんじゃないか、と思いましたね」

――あのときは、そんなに状態が良くなかったのですか?

「ピークのときと比較したら10分の1くらい。まさに最悪という感じでした」

――それが、桜花賞では一変したわけですね。

「いや、毛がぼうぼうで(馬体は)見た目からしてダメでした。チューリップ賞よりは良くなっていたとは言っても、桜花賞のときだって、ピークのときと比べたら6分程度でしたよ。それでも勝つんやから、いかにもともとの能力がすごいかということです。だからあの当時、自分は周囲の人間にこう言ったんです。『この馬には(不安と言われていた)距離も何も関係ない。オークスは楽勝するから』と。実際、2着のヴィルシーナに5馬身差の圧勝。でも、当日は3番人気でしたからね。みんな『どこ見てんねん』と言いたくなりましたよ(笑)」

――そのオークス、岩田騎手は騎乗停止中で、手綱を取ったのは川田将雅騎手でした。悔しい気持ちなどはなかったですか?

「いや、そういう思いはまったくなかったですね。だって、悪いのは自分ですから。馬にも、関係者にも、ファンにも、申し訳ないことをして、その代償として(オークスに)乗れなかったわけですから。悔しいなんてまったく思わなかったし、誰が乗ろうとジェンティルドンナが勝ったことは、素直に良かったと思いました」

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