【競馬】福永祐一が語る、牡馬クラシックの行方「ディープの子のライバルはディープの子」 (2ページ目)
――その「大物」登場の期待が今年の3歳馬にかかるわけですが、福永騎手が今後のクラシック路線で騎乗予定のワールドエースもその一頭。デビュー戦は強い勝ち方でしたが、手応えはいかがでしたか?
「この馬と、同じディープ産駒のヒストリカルは、(騎乗した)デビュー戦を勝った段階で、クラシックに行く馬だと思いましたね」
――福永騎手は東京遠征のために騎乗できませんでしたが、その2頭はクラシックとの関連が深いと言われるきさらぎ賞で、ワールドエース(小牧太騎手)が勝利して、ヒストリカル(安藤勝己騎手)が2着。しかも勝ち時計の1分47秒0はレースレコードでした。ここまでで、最も高く評価できる3歳重賞という声もあるくらいです。ただ、ワールドエースはその前のレース、2戦目の若駒Sでは5頭立ての少頭数で単勝1.2倍という断然の人気を背負いながら、逃げ馬を捕まえ切れずに2着でした。その敗因をどう見ていますか?
「あのときは、重馬場で馬場も悪かったですから。それでも勝とうと思えば、逃げ馬の真後ろで競馬するという手もあったのでしょうが、たとえそれで勝ったとしても、その後のレースでどうなるか......。というのも、元々前へ行きたがる馬ですから、ここで行かせてしまうと、次からは抑えが効かなくなってしまうかもしれません。そう思って、あえて後ろで我慢させるという選択をしました」
クラシックで勝つためには
目先の勝利よりもプロセスが大事
――その選択については、レース後にかなりのブーイングがありました。
「僕らは結果でしか評価されない世界にいて、結果として負けているわけだから、批判されるのはやむを得ないとは思います。でも、きさらぎ賞のレース後に(ワールドエースに騎乗した)小牧さんが、『勝てたのは、前走で競馬を教えてくれたのが大きかった』と言ってくれました。少なくとも、意味のない敗戦ではなかったのではないでしょうか」
――やはりこの時期の3歳馬には、ただ結果を求めるだけではなく、ときには将来のために競馬を教えることも必要だ、ということでしょうか?
「遡(さかのぼ)れば、あのスペシャルウィークにしても、2戦目の500万条件戦で地方の馬に負けています。では、その地方の馬のほうがスペシャルウィークより強いのかといえば、そんなことはないでしょう? 大事なのは、その馬の目標をどこに設定しているかであって、その目標達成のために今何をやるべきか、ということです。確かに、教えながら、いろいろ経験させながら、それでも勝つというのが理想だけれども、それはなかなか難しいこと。のちのダービー馬だって、途中では地方の馬に負けたりするのですから」
――昨年の三冠馬オルフェーヴルも負けて学んだと言われています。
「春のクラシックでは、どこに目標を置いて、そこで結果を出すためには、それまでに何を経験させるべきか、ということが大事。そのことを、オルフェーヴルはわかりやすく見せてくれましたよね」
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