昇格1年目で成功する条件。今季の大宮アルディージャは本物か? (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei  photo by Getty Images

 実際に今季の大宮は、我慢しながら結果を手にしてきている。3つの貯金がありながらも、得失点差はわずかにプラス1。この数字こそが、しぶとく勝ち点を手にしている事実を象徴している。

 一方で、J2で培ってきたパススタイルに関しては、まだまだ表現できていないのが実情だ。横浜FM戦で「いいボールが入ってこなかった」という家長は、ときに最終ラインにまで顔を出し、ボールを受けてビルドアップの一端を担うシーンがたびたび見られた。「マイボールになったときに、もっとしっかりビルドアップしないといけない。どんな相手でも攻撃的なサッカーをやっていきたいし、勝って当然というような内容にしないといけない」と課題を語り、上位争いを演じる現状にも、決して満足していないことをうかがわせた。

 今シーズン開幕前に渋谷洋樹監督も、「これまでの堅守に、昨年から取り組んできた多攻を加えて、新しい風を吹かせたい」と抱負を語っている。しかし、現実的には守勢に回る試合が多く、結果は出せているものの、理想にはほど遠いのが現状だろう。

 シーズンを通して結果を出していくには、自らのスタイルの体現が欠かせないことを、前述の3チームが証明している。その意味で、今の大宮はまだ「昇格1年目で成功」の条件を満たしていないと言わざるを得ない。それでも、理想形は描けているし、そこに向かっていく意思も備わるだけに、今後の戦い方次第で可能性は生まれてくるだろう。

「理想」と「結果」を両立できたとき、大宮の強さは本物へと変わる。

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