天敵イラクを倒してリオ決定。植田直通が晴らした3年2カ月分の悔しさ

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki 岸本勉●撮影 photo by Kishimoto Tsutomu

 今もはっきりと記憶に残る、印象深いシーンがある。

 2012年11月11日、UAE・ラスアルハイマ。当時、アジアU-19選手権に出場していたU-19日本代表は、ヤマ場となる準々決勝を迎えていた。

イラクに2-1で勝利し、リオ五輪出場を決めた日本イラクに2-1で勝利し、リオ五輪出場を決めた日本 勝ってベスト4に進出すれば、翌年に開かれるU-20ワールドカップ出場が決まる大一番の対戦相手は、グループリーグで韓国を押しのけ、首位で勝ち上がってきたイラク。勢いに乗れず、グループリーグをようやく2位で突破した日本にとっては、かなりの難敵だった。

 すると試合は、案の定と言うべきか、日本はイラクに先制された後、一度は追いついたものの、再び勝ち越されて1-2の敗戦。90分を通して流れをつかめなかった日本にとっては、スコア以上の完敗だった。

 この結果によって、日本はU-20ワールドカップ出場を絶たれた。当然、選手たちは肩を落としていたが、なかでもひと際悔しさを露(あら)わにする選手がいた。

 彼はこの試合でピッチに立ってはいない。屈辱の敗戦を外で見ているしかなかった。それでも、試合が終わると、ベンチを覆っていたアクリル板を破らんばかりに、何度も何度も殴りつけた。誰にも増して、目の前の状況を受け入れられずにいるかのようだった。

「あのときのことは、ものすごくよく覚えている」

 そう語るのは、DF植田直通である。

「自分が何ひとつチームに貢献できなかったという思いが強くて。ベンチに座ってチームが負けるのを見ていただけで、何もできなかったのが、ホントに悔しかった」

 あれから、およそ3年2カ月。日本は再び世界行きのキップをかけて、イラクと対戦することになった。

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