鳥栖のエース、豊田陽平に聞く「妻の出産と30代からのストライカー」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 田村翔/アフロスポーツ●写真

 30歳になった今シーズン、積み上げてきた経験によって、得点へアプローチするスキルは増していた。事実、開幕からリーグ戦19試合で14得点という驚異的ペースを保っている。しかしその代償だったのか。後半戦は怪我と対峙する日々に明け暮れた。得点よりもチームの勝利を喜ぶ男にとって、つらい日々だった。怪我による離脱でチームはセカンドステージ第3節から第14節まで1勝5敗6分け。強い責任を感じた。

「今年は、"もう一段上のステージのサッカーを、順位を"というところでスタートしたんですが」

 森下仁志監督が新たに就任し、体制が大きく変わった2015年シーズンは、前年の5位から12位に後退した。

「鳥栖は今まで、"縦に速いサッカー"というのを徹底してやってきて、それは選手に浸透していました。縦一本でセカンドを拾い、そこからつなぎ出せるチームだった。それを今シーズンは縦一辺倒ではなく、後ろからの組み立てにもチャレンジするところでした。選択肢を広げよう、パターンを増やそうと。進歩するために、ということだったと思うんですが。

 正直を言えば、選択肢が増えたことによって、どれにしたらいいのか、どう動けば選手として評価されるのか、微妙に分からなくなったんです。今までのパターンでも点は取れていたし、パターン化された強さもありました。実際にいい成績を残せてきましたからね。喩(たと)えれば、黒と白だけの服が似合うと思っていたんだけど、カラフルな色や柄物を与えられ、服選びは楽しかったけど、それだけで手一杯になってしまった、という感じですかね。黒と白に慣れていたこともあり、うすうすとは感じていましたけど、花柄を合わせるのは難しいなぁと」

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