1年前はJ通算14試合2得点。武藤嘉紀、激動の365日 (3ページ目)

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi  photo by AFLO

 わずかな可能性にかけて、地道にコツコツやる――。今では知られたエピソードだが、FC東京U-18時代、トップチームから昇格の打診を受けたが、「今、プロの世界に飛び込んでもやっていけない」という判断をして、大学サッカーの道に進んでいる。そして慶應義塾大学ソッカー部で技術、メンタル、フィジカルを鍛え直し、才能を開花させたのだ。

 プロのサッカー選手としてやっていける可能性が1パーセントだとすると、それを実現させるために最善の道を選ぶ。18歳の武藤にとって、それはトップチームではなく大学サッカーだった。

 同じように将来、欧州のトップレベルでプレーするためには、スター選手がひしめき、出場機会を得られにくい強豪クラブではなく、今は着実なステップアップが望める中堅クラブのほうがいい――。いち早くオファーをくれたイングランドの強豪チェルシーではなく、マインツを選んだのは、自分に何が足りないかを分析し、どこで何をすればいいのかを判断できる武藤らしい決断だったと言える。

 マインツの監督自ら「欲しい」と言ってくれたことも決め手だったと明かしたが、先輩の存在も大きかったはずだ。

「オカ(岡崎)さんはひたすらオフの動きで勝負しているんですよね。これが点を取るFWの動きなんだな、と思いました」

 ウインガーからストライカーに転身した武藤が動き方の参考にしたのが、マインツの岡崎慎司だった。DFとの駆け引きを何度も繰り返す、その体力と忍耐強さにも感銘を受けた。参考にする材料はいくらでもあるという。

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