J逆転優勝へ。宇佐美貴史「僕がガンバを勝たせたい」

  • 高村美砂●文 text by Takamura Misa
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

「天王山」に挑むキーマンの決意(2)
ガンバ大阪・宇佐美貴史編

 11月8日に行なわれたナビスコカップ決勝。そのアディショナルタイム、戦況を見守りながら、自らのチームの勝利を確信したのだろう。すでにベンチに下がっていたガンバ大阪のFW宇佐美貴史は涙をこらえられなかった。

初のタイトルを手にした宇佐美貴史がレッズとの大一番に闘志を燃やす。初のタイトルを手にした宇佐美貴史がレッズとの大一番に闘志を燃やす。「ずっと欲しかった"タイトル"ですからね。ドイツ(バイエルン・ミュンヘン、ホッフェンハイム)での2年、『ガンバで結果を残せなければ、サッカーをやめる』という覚悟で日本に戻ってからの自分、ここにたどり着くまでの、いろいろなことが思い出されて、涙をこらえ切れなくなった。本当にうれしい。(タイトルを手にすることが)こんなにもうれしいものだとは思わなかった」

 サンフレッチェ広島を相手に2点のビハインドを強いられながらも、3-2と逆転勝利を飾ったガンバ。チームにとっては7年ぶり2度目の栄冠で、2009年度(決勝は2010年1月1日)の天皇杯優勝以来、5年ぶりのタイトルだった。しかし宇佐美にとっては、チームの主力選手として獲得した初のタイトル。その分、喜びはひとしおで、試合後も人目をはばからずに顔をくしゃくしゃにして泣いた。

 同時に、その涙は、残すふたつの"タイトル(Jリーグと天皇杯)"への欲を強くさせた。

「こんなにうれしいものだと知った今、(タイトルは)何個でも獲りたい。そのために、自分のすべての力をガンバに注ぎます」

 その決意を示すかのように、オフとなっていたナビスコカップ決勝の翌日にも、宇佐美はクラブハウスに顔を出している。前日に、泣いて、笑って、喜んで、さまざまな表情を見せたのが嘘のように、彼は「喜ぶのは、一日で十分。すでに気持ちはリーグ戦に切り替わりました」と、引き締まった表情を見せると、自らのロッカーを大掃除して、お風呂に入り、頭の中を整理して、練習場をあとにした。

「僕、頭の中を切り替えたいときに、大掃除がしたくなるんです。とにかく、身の回りをすべてきれいにしたくなる感じ? あの日も、ナビスコカップはナビスコカップで終わったから......とりあえず、ロッカーを全部掃除して、お風呂に入り、汗を流して『あぁ~、すっきりした』と、満足して帰りました。自分にしかわからない感覚かもしれないけど、その瞬間から、僕の気持ちは次の戦いに向かっていますよ」

「次の戦い」とは、Jリーグと天皇杯のふたつを指すが、まずは何と言っても11月22日に控えたJリーグ第32節。首位・浦和レッズとの頂上決戦だろう。レッズを勝ち点5差で追いかける2位ガンバとしては、今季ふたつ目のタイトル獲得へ、決して負けられない一戦。仮に負けるようなことになれば、その瞬間にレッズの優勝が決まるからだ。

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