「香川×本田」のユニットを手放しで喜べない理由

  • 飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi 高橋学●写真 photo by Takahashi Manabu

 1−0でジャマイカを下し、3戦目にして初勝利を飾ったアギーレジャパンが前半と後半で見せたのは、まるで異なる「表情」だった。

 前半はオウンゴールで先制したが、単調なクロスを放り込む場面が目立ち、決定機はわずかに2回。一方、後半はコンビネーションによる崩しが増え、6度の決定機を迎えたが、最後までゴールは遠かった。

決定的なチャンスを逃し、ノーゴールに終わった本田圭佑決定的なチャンスを逃し、ノーゴールに終わった本田圭佑 低調だった前半と、見応えのある崩しを見せた後半----。

 試合後、センターフォワードで先発した岡崎慎司が興味深いことを言っていた。

「相手は前からプレッシャーを掛けてきていた。そういうとき、今までだったらそれでもパスを回そうとしていたけれど、今はそうではなく、シンプルに相手の嫌なところを突いていく。ロングボールをサイドに入れたり、単純なボールで相手の嫌なところを突いたりして、自分たちが優位に立ってパスを回せるようになるまで我慢して、リスクを犯さないようにしている」

 さらに、こう言った。

「それ(前半はリスクを負わないこと)をやり抜いたら、そのあと、自分たちの強みを出せるようになると思う」

 我慢の前半を終え、相手に疲れが見えてきた後半、岡崎の言う「自分たちの強みを出す」ためのスイッチが入った瞬間があった。それは、右ウイングだった本田圭佑を左ウイングに回した59分のシフトチェンジだ。これで、本田と香川真司の距離が近くなり、ふたりの間のパス交換が目に見えて増えていった。

 ザックジャパンのときは、香川が左サイドハーフで本田がトップ下だったが、このシフトでは、香川が左のインサイドハーフで本田は左ウイング。オリジナルポジションで、ふたりがここまで近い距離でプレイするのは初めてと言っていい。

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