日本サッカー界にはアギーレより心配なことがある

  • 杉山茂樹●取材・文 text by Sugiyama Shigeki 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 それこそ僕が、一人の監督に4年丸投げすることを好ましくないと考える理由だ。4年は長い。2年で十分。今が2016年だったら、その半分をテストに費やしても、ファンやメディアがしびれを切らすことはないだろう。

 ザッケローニとは異なり、アギーレは代表チームの監督を務めたことがある。しかし、彼が代表チームを巡る日本の特殊性まで理解しているとは思えない。代表チーム中心主義。これと彼は4年間、どう向き合うつもりなのか。両者の相性が、僕には良い関係にあるようには見えないのだ。

 だが一方、少なくとも札幌ドームを埋め尽くしたファンは、アギーレジャパンに好意的だった。札幌での代表戦は年に一度あれば良い方だ。この試合も、歓迎ムードの中で行なわれた。実験的なメンバーで、良いところなく完敗を喫しても、ブーイングひとつ起きなかった。

 これはブラジルW杯後に行なわれる最初の試合。本大会で不甲斐ない戦いをした代表チームに不満を溜めているファンがいたとしても不思議ではない。むしろそちらの方が自然だ。

 試合を撮影したカメラマンによれば、アギーレは試合後、敗戦にもかかわらず選手に黄色い声を飛ばすファンを、珍しいものを見るような目で眺めていたそうだ。こうしたファンは、世界的にそう多くない。

 試合が終わるや、場内アナウンスが「両チームに盛大な拍手をお送りください」と言えば、その通りに拍手を送る人の何と多いことか。拍手を強要するスタジアムDJもどうかしているが、それにオートマチックに従うファンの方もどうかしている。

 悔しくないのか、と言いたい。これは札幌のファンだけに限った例外的な話なのか。横浜で行なわれる続くベネズエラ戦のスタンドでも、この調子は維持されるのか。

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