原博実専務理事「代表監督は常にリストアップしている」

  • 杉山茂樹●インタビュー interview by Sugiyama Shigeki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

――そうした情報は、我々にはまったく伝わってきませんでした。

 そんな情報は出しませんよ。実際に日本代表監督を務めている方がいるわけですから。技術委員会としては、そのときの監督を全力でサポートしていきます。しかし、その一方で不測の事態への備えは常にしていなければなりません。それは、Jリーグの各クラブのGMも一緒だと思います。

――そうしてリストアップしていた中で、ザッケローニ監督は何番目の候補だったんですか。

 何番というものはありません。実際にいろいろな話をしての感覚とか、印象、そのときのお互いの状況や、タイミングというものがありますから。

――ザッケローニ監督は代表チームを指揮した経験がありませんでした。それについて不安を感じることはなかったですか。

 代表監督の経験があれば、それに越したことはないと思っていました。でも、ビッククラブを指揮した経験があって、高いレベルでの戦いも知っている。多くのスター選手も指導しているし、最初から代表監督をやっている人はほとんどいませんから、問題はないと思っていました。もちろん、ザッケローニ監督にとっては、今回が初めての代表でしたから、彼自身には戸惑いがあったかもしれません。練習をやりたくても、やれないから、ストレスを感じているようなところはありました。その辺は「これが代表監督ですよ」と、こちらでフォローしていました。

――最初の2年の任期を終えたとき、続投がすんなり発表されました。その際、このままザッケローニ監督でいいのか、議論することはあったのですか。

 それまでの2年間を見て、アジア最終予選、そしてW杯まで任せられる監督だと、評価しました。それは、技術委員会を含めて、協会全体としての判断です。外国人監督の場合、再契約の際に他のオファーと天秤にかけたりして、お金の問題などでもめることがあるのですが、ザッケローニ監督の場合はそういうことも一切ありませんでした。

――僕は、文句なしに続投させるほど、決定的な仕事をしていたとは思いませんでした。W杯アジア3次予選では、アウェーの北朝鮮戦(0-1)で負けて、ウズベキスタン(0-1)にはホームで負けましたからね。

 すでに3次予選の突破を決めたあとで、北朝鮮戦は新しいメンバーに出場機会を与えられたし、ウズベキスタン戦ではいろいろな課題を確認できたと思います。しかし、それを問題視することはありませんでした。あそこでの敗戦によって、最終予選を勝ち上がることが決して楽なことではないと、感じてくれたほうがいいと思っていました。実際、その思惑どおり、最終予選には選手、監督を含めてみんなが気を引き締めて臨んでくれて、オマーン戦(3-0)、ヨルダン戦(6-0)と、最高のスタートを切ってくれました。海外組、国内組のコンディションもよくて、ザッケローニ監督の4年間の中で、最もパーフェクトな仕事だったと思います。

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