和製C・ロナウド。武藤嘉紀がアギーレJの「顔」になる

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by Masashi Hara/Getty Images

 現在はFC東京で2トップの一角としてプレイすることが多く、ゴール前で勝負する機会が増えていることも得点増の要因となっている。

 左サイドを主戦場としながらも、2トップに入ればゴールも量産する。さながら、そのプレイスタイルはポルトガル代表のクリスティアーノ・ロナウド(レアル・マドリード/スペイン)に重なる。4-3-3をはじめ、いくつかのフォーメーションを使い分けると公言するアギーレ監督にとっては、非常に重宝する選手となるはずだ。

 現在、さまざまな形からゴールを量産している武藤だが、思えば記念すべきリーグ戦初ゴールには、彼の魅力がすべてつまっていた。4月19日に行なわれたJ1第8節、セレッソ大阪戦(2-0)でのことだ。

 左サイドのハーフウェイライン付近でボールを受けた武藤は、DFに後ろからつかまれながらも引きずるようにして振り切ると、一度パスを出し、ゴール前に走り込んだ。そして、ペナルティーエリアに入るところで再びボールを受けてドリブルで進み、冷静にGKの股間を抜いてゴールを決めている。

 力強いボールキープ、基本に忠実なパス・アンド・ムーブ、スピードのあるドリブル、落ち着いたシュート。武藤自身、「自分のいいところが凝縮されたゴール」と自画自賛する会心の一発だった。

 当時の武藤曰く、「これまで(開幕戦から試合に出続けながら)点が取れなくて少し悩んでいたところもあった」。だが、その3日前に行なわれたナビスコカップのヴィッセル神戸戦(3-0)でプロ初ゴールを決めたことで、「吹っ切れて、シュートのところで落ち着けるようになった」と語っている。ゴール量産の予兆は、すでに4カ月前からあったわけだ。

 今季8点目を決めた鹿島戦も、「(FW渡邉)千真くんが体を張ってくれたので(こぼれてきたボールを)決めるだけだった」と本人はそっけなかったが、武藤の能力を知るには十分すぎる試合だった。

 鹿島の出足のよさに押されていたFC東京は0-2で前半を終了。だが、後半開始早々、武藤がスピードを生かしてDFラインの背後へ飛び出し、浮き球のパスをトラップしたところに相手DFの足がかかってPKを獲得。これをエドゥーが決めて1点差に迫ると、その後も武藤は左サイドからドリブルでカットインしてシュート。さらには左サイドからのクロスにゴール前で合わせてヘディングシュートを放つなど、積極的にゴールへ迫った。

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