J3開幕。プロリーグとして山積する課題と射し込む希望 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • アフロスポーツ●写真 photo by AFLOSPORTS

 駅からスタジアムまで、案内などはほとんどない。道すがら、コンビニなどもないだけに、道が正しいのか不安になる。ぽつぽつとサッカー観戦者らしき人たちが連なっているのが目安か。徒歩20分強。最寄り駅と言うにはぎりぎりの距離だろう。

 SC相模原の本拠地、ギオンスタジアムは晴天の下で華やいでいた。

 相模原の代表を務める望月重良(元日本代表)との関係だろうか、名波浩、田中誠など清水商の先輩たちからお祝いの花が届けられ、それをサポーターが携帯カメラで撮影していた。スタジアムの周りにはドネルケバブや珈琲の屋台が並び、いくつかのお店では、相模原カラーのグリーンのレプリカシャツを着た人々の長い列ができていた。周辺の光景はJリーグと遜色なかった。

 新しいスタジアムは今も改修中で、両方のゴール裏はまだ座席がない。しかし電光掲示板は真新しく、2010年まで県リーグにいたアマチュアクラブであることを思えば、称賛に値する成長だろう。開幕戦に訪れたサポーターの数は、昨季JFLの平均観客数である1924人から2873人と大幅に増えた。マスコミの注目度も高く、アウェーのツエーゲン金沢からは地方テレビや地方ラジオのメディア関係者が何人も訪れていた。

 J3という響きは、間違いなく人々の関心を高めていた。

 しかしプロという呼び名を冠しても、サッカーの中身が劇的に変わるものではない。技術、戦術、体力の乏しさは当然そうだが、振る舞いに関しても同じことが言える。例えばこの日、選手交代で退く選手が入る選手と握手を交わさず、あまつさえバックスタンドから退場していたのが気になった。急ぐ展開やケガの場合を除き、プロ選手は交代のときにその意志を通じ合わせるもので、それは然るべき儀礼である。

 そして椿事もあった。相模原のブラジル人センターバックは、失点の連続に精神的に切れてしまい、自らプレイを拒否する姿勢を見せた。これだけでも面食らうが、交代が告げられると、彼はピッチを"徘徊"し、宥(なだ)めて外に出そうとするチームメイトを払いのけ、散々駄々をこねた後にようやく出ていった。言うまでもなく、プロ選手のするべき行為ではない。

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