膨らむ不安。W杯イヤーにわずか2試合という「異常性」

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki
  • スエイシナオヨシ●撮影 photo by Sueishi Naoyoshi

 日本代表がニュージーランドと今年初の親善試合を行なう3月5日、韓国はアウェー(アテネ)でギリシャと対戦する。韓国は今年、すでにアメリカ遠征を実施して、コスタリカ、メキシコ、アメリカと試合をしている。したがって、ギリシャ戦は今年4試合目の国際試合になる。

 試合数の違いはもちろんのこと、W杯イヤーの大事な強化試合で、片やW杯に出場する欧州の強豪を相手にし、片やFIFAランキング89位(3月4日現在)との対戦である。"強化"の差は歴然と言える。

 そしてまた日本のW杯対戦国、つまりギリシャは「仮想・日本」を想定し、最善のチームと戦うのである。

「ギリシャvs韓国」「日本vsニュージーランド」――。

 このふたつのカードをじっと見比べただけでも、暗澹(あんたん)たる気持ちになる。日本の、W杯本番が心配になる。

W杯本番まで残り2試合。選手たちは不安を感じていないのだろうか。W杯本番まで残り2試合。選手たちは不安を感じていないのだろうか。 さらに日本の次戦は、5月27日のキプロス戦。これが、ザックジャパンの国内ラストゲーム、W杯へ向けての壮行試合だ。

 その壮行試合の発表会見で「(キプロスの)体つきはギリシャに似ているかもしれない」と、原博実技術委員長が苦しい答弁をすれば、複数のメディアは「キプロス戦は仮想ギリシャだ!」との見出しを立て、盛り上げ役に回った。協会の不備を追求するどころか、ダメなものを可能な限りよく見せようと必死にフォローした。

 確かにキプロスの公用語は、ギリシャ語だ。しかしW杯に出場したこともないし、FIFAランキングは122位である。

 W杯イヤーのラスト半年で、ニュージーランド、キプロスとしか試合が組めない日本。この"失政"に比べれば、選手のプレイや監督の采配ミスなどは、とても小さな問題に見える。

 本大会の成績に、それが具体的にどう影響するか定かではない。だが、スポーツにおいて最も重要なのは、本番までの過程でベストをどれほど尽くしたか、である。ベストを尽くせば、それでメダルを逃しても、少なくとも本人的には悔いがないはずだ。実力が足りなかったか、運に恵まれなかったか、いずれかで納得するだろう。

 五輪で金メダル候補と騒がれた選手が、本番で転倒して6位に終わっても、国民はなぜ温かい拍手を送ろうとするのか。それまでのがんばりを多くの国民が認めているからだ。

 誰もが「問題アリだ」と思う強化スケジュールを組み、その挙句、結果が残せなければ、温かい拍手はもらえない。選手がベストを尽くそうとしても、取り巻きが足を引っ張るケースは最悪のパターン。もし戦いに敗れたとき、真っ先に後悔したくなる点だ。

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