森重真人が短期間で感じた「ザックジャパンの変化」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 それでも、個人的にはいろいろな収穫があったという。それは、Jリーグでプレイし、欧州で戦う選手たちよりも国際経験の少ない森重にとって、非常に重要なことだった。

「ベルギーという、フィジカルが強い相手と戦ってわかったのは、自分に足りないのはフィジカルとスピードだということ。スピードは、50m走を早く走るということではなく、反応のスピードとか、アジリティとか。それらが今のままだとダメだなって思ったので、W杯まで残り時間は少ないですけれど、そこはしっかり取り組んで高めていきたい。そうやって課題に取り組むことは、自分のモチベーションにもなりますし、結果的に自分の自信にもつながると思っています」

 ところで、ザッケローニ監督からの評価はどうなのだろう。最近の起用法を見れば、確実に監督からの信頼度は増しているように思える。それは、誰よりも森重自身が感じていることではないだろうか。

「監督にどう思われているのか、正直、よくわからないですね。DFは印象のポジションですから、代え難いポジションでもあるんです。だから、その印象を覆(くつがえ)すためには、普通の活躍ではダメなんですよ。監督の中で『絶対にこいつのほうがいい』という気持ちが芽生えない限り変わらない。実際、まだレギュラーはとれてないわけですからね。

 それを踏まえて考えると、監督からの信頼はまだまだ得られていないのかなと思いますし、レギュラーであるふたり(今野泰幸と吉田)の背中はまだ遠い感じがします。でも僕は、東アジアカップ(2013年7月)で代表に入ったときから、代表で、スタメンで試合に出ることを目標にやってきた。(吉田)麻也とコンちゃん(今野)のふたりの間に割って入って、どちらかを蹴落とすって。今もその思いでやっている最中です」

 チームの現状については、どうだろう。森重が海外組を含めた代表に加わったのは、昨年の8月。チームの状態があまりよくない時期だった。その後、11月の欧州遠征で結果を出した。何かしら、チームの変化を感じているのだろうか。

「僕はそれほど長い間、このチームにいるわけではないので、変化を見つけるのは難しいですね。それでも、(柿谷)曜一朗や(山口)螢、大迫(勇也)ら新たなメンバーが入って、彼らを生かすためにはどうしたらいいか、ということを含めて、チームをよりレベルアップさせることに取り組んでいる。その新しいチームで、もうワンランク上に行こう、という強い意識は感じています。そういう雰囲気になったのは、新たなメンバーが加わって競争が生まれ、活性化したからだと思います。

 チームが成長するには、ずっと試合に出ている選手を脅かす存在がどれだけ出てくるか、だと思うんです。僕らが入る前の代表チームには、そういう部分が足りなかった。各クラブでもそうだと思うのですが、(ライバルとして)意識する存在がいないと気を抜いてしまうのが人間なので、刺激し合える選手が近くにいることはとても重要なこと。代表は、そうした状況になりつつあるかなと思います。

 チームの戦い方としては、オランダ戦、ベルギー戦の後半の戦い方が今後の参考になったと思う。2試合とも、後半からヤットさん(遠藤保仁)が入って、攻撃が格段に良くなった。ボールが落ち着くところが増えれば、あれだけいい攻撃ができるんだと思ったし、それぞれの後半のようにラインを高くして前からいかないと、日本の良さが出ないと思った。それからすると、この戦い方が今後の日本の戦い方のベースになるんだろうな、と思いましたね」

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