ベルギー戦で柿谷のゴールを生んだ山口螢のプレーとは

元日本代表FWである福田正博氏が、ザックジャパンのゴールシーンを分析。得点が生まれた理由や、ポイントとなった選手の動きなどをわ¬かりやすく解説。今回取りあげるのは、2013年11月に行なわれたベルギー戦の柿谷曜一朗のゴール。

【日本代表】強豪ベルギーから決めた柿谷曜一朗のゴール
【福田正博 日本代表スカウティングレポート Vol.33】

国際親善試合 vsベルギー 前半37分 柿谷曜一朗 
日本 3-2 ベルギー 
2013.11.19 ベルギー・ブリュッセル

 今回は、ベルギー戦の1点目のゴールシーンを解説します。

 これは、シンプルなサイドからのクロスに対しての、柿谷曜一朗のゴール。一番褒められることは、酒井宏樹のサイドに出ていくタイミング。そして、なんといってもクロスの質が絶妙です。

 それに対して、柿谷がいいポジションを取っていた。ゴール前で何か駆け引きしたわけではないです。ディフェンスとディフェンスの間にポジションを取って、そこにカーブをかけて落ちてくるようなボールをピンポイントで合わせた酒井宏樹のクロスの質、これがこのゴールを生んだ一番の要因だと思います。

 酒井宏樹がなぜ右サイドであれだけフリーでクロスを上げることができたのか。

 まず山口が酒井宏樹にボールを出します。そして、酒井から本田にボールが出る。酒井は本田にボールを預けて、ボールを追い越していく。このボールを追い越していく動きは、オランダ戦もベルギー戦で、サイドバックの選手も、ボランチの選手も、そういう意識が非常に高かった。

 このシーンでも酒井がボールを預けて、本田を追い越していきます。本田を追い越した時に、本田のマーク付いていた選手が酒井を見る。そして、山口に付いていた選手が、酒井にボールが出て、本田にボールが行った時にプレッシャーをかける。ここで、相手のディフェンスがスライドしています。このシーンでは、酒井は実はスペースをうまく使えない。

 なぜここのスペースを使えたかというと、山口がここでボールをもらおうとして、本田を追い越して、スペースでパスをもらおうとしている。酒井もこういうほかのスペースでもらおうとしている。ベルギーの選手が一瞬山口のほうに顔を向けて、少し山口をケアする。そのことによって、ちょっと内側に入る。その内側に入ったところを本田が見逃さず、深いところ、ゴールから近いところにボールを出せた。

 山口は直接ボールにはかかわってないですが、ボールを追い越していくこの動きがあったからこそ、酒井宏樹がいい形、いいポジションでボールを受けることができた。山口の動きによって、酒井を見なければいけない選手が少し混乱して、山口を意識したがために、パスコースが空いてしまった。そこを本田が見逃さずにいいパスを出した。

 酒井宏樹がここでワンタッチで入れたことによって、相手は中央で修正できなかった。なおかつピンポイントで柿谷のところに合ってきた。柿谷もワンタッチでゴールに入れた。ここの崩しが、酒井と本田だけの関係ではなくて、山口が非常にうまくからんでいたからこそ、右サイドをうまく攻略できた。最後は質です。クロスの質が非常に良かったから生まれたゴールでした。

プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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