ジュビロ、J2降格。王者転落を招いた「三大要素」

  • 望月文夫●文 text by Mochizuki Fumio
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 Jリーグ第31節、17位のジュビロ磐田がサガン鳥栖に0-1で敗れ、今季順位が16位以下になることが確定。1997年、1999年、2002年と、過去に3度もJリーグ王者に輝いている"名門"が、まさかのJ2降格となった。

第7節を終えて最下位に沈んだジュビロ磐田。そのまま浮上することはできなかった。第7節を終えて最下位に沈んだジュビロ磐田。そのまま浮上することはできなかった。 降格への引き金となったのは、戦術的な問題だった。就任2年目を迎えた森下仁志監督は、「守備のリスクはあっても攻撃的に」というスタイルを志向し、これまで慣れ親しんできた4バックから、今季は前線に厚みを持たせる3バックに変更。攻撃の起点として鋭いクロスを供給する右サイドバックの駒野友一をサイドのMFでプレイさせて、ホットラインを形成するFW前田遼一ら、前線の選手との連携をよりスムーズにすることを狙った。

 ところが、その思惑に反して、駒野からのクロスの数は4バック時代に比べて大幅に減少した。前線に選手が増えた分、行き場所を失った駒野は、持ち味となるオーバーラップを発揮できずじまい。さらに3バックにしたことで後方のスペースが広がり、守備の穴埋めに奔走するシーンが増して、積極的な攻撃参加ができなくなってしまったのだ。

 森下監督は「駒野の仕事はクロスを上げるだけではない」と多彩な攻撃の起点としての役割を期待し、駒野の"クロス減少問題"は意に介さなかったが、明らかにジュビロの良さは消えてしまった。生命線だった前田との絶妙な連携はほとんど見られなくなり、前田の得点チャンスも激減。対戦相手までが「(駒野のクロスが減って)怖さがなくなった」とうそぶいた。

 結局、昨季は開幕7試合で10得点を記録するも、今季は6得点止まり。攻撃志向で変更したシステムが裏目に出て、チームは開幕7戦勝ち星なしで最下位に沈んだ。その後、第8節で湘南ベルマーレ相手に今季初勝利(4-0)を飾るも、続く9節ではヴァンフォーレ甲府に1-2で敗れ、森下監督は解任された。そして、代行で指揮を執った長澤徹ヘッドコーチが4バックに戻して、後任の関塚隆監督に引き継いだが、一度狂った歯車が戻ることはなかった。

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